「PGAツアーでアジア勢が活躍する時代が来る」 太平洋クラブがアマチュアに託す夢
◇アジアパシフィックアマチュアゴルフ選手権 最終日(6日)◇太平洋クラブ御殿場コース(静岡)◇7217yd(パー70) 「アジア女子アマ」では安田祐香が優勝<2019年> アジア太平洋地域のアマチュアナンバーワンを決める大会が日本で行われたのは2010年以来2度目。国の象徴である富士山の麓に広がる太平洋クラブ御殿場コースに、40の国と地域から120人が集い、来年の海外メジャー「マスターズ」と「全英オープン」出場をかけて争った。通常のトーナメントはもちろん、世界的にはオリンピックやワールドカップまで、大会誘致の裏側には“もうひとつのストーリー”があるもの。クラブの代表取締役社長・韓俊氏に開催にいたった経緯を聞いた。 「アジアアマを太平洋クラブでやりたい」。そう思うようになったのは7年も前のことだった。過去14回に渡り、舞台となってきたのは各国を代表するトップクラブばかり。創立53年になる名門コースは、次に日本で行われるときは…と機会をうかがっていた。国内開催が噂されるようになった21年ごろから大会運営に積極的に接触し、話し合いを続け、誘致が決まった。 大会理念との共通点もある。太平洋クラブでは、会員の子どもにゴルフの喜びを伝えるプログラムや、高校のジュニア大会「PGAジュニアゴルフ選手権」を開催するなど、若い世代へのゴルフの普及、ジュニアの育成に力を入れている。優勝すればアマチュアでオーガスタに足を踏み入れることのできるアジアアマは、「ジュニア世代に対するゴルフの提供という面で、トップの大会だと思っている」。“アマチュアが最も勝ちたい大会”に強く共感した。
これまでに多くの若手ゴルファーが大会を通じて海外に羽ばたいた。埼玉・霞ヶ関カンツリー倶楽部 西コースで行われた2010年大会を制した松山英樹は、まさに“理想のモデル”だ。当時18歳で大会を制した松山は、優勝者の資格で日本人アマとして初めてマスターズに出場。通算1アンダーの27位でローアマチュアに輝いた。そしてそれから10年後、松山はアジア勢として初めてオーガスタの頂点に立ち、グリーンジャケットに袖を通すこととなる。 太平洋クラブは18年にリース・ジョーンズ氏の設計、松山の監修で全面改修を行った。「松山選手が世界で唯一改修に携わったコースに、いまのアジアの選手たちを呼ぶというのは、また新たな物語になるんじゃないかと思った」。大会から再び新たなマスターズチャンピオンが登場すれば、筋書として最高だ。 ちなみに、松山と同じスポーツジムに通っているという韓氏。昨年末には“ばったり”会い、大会のことを話した。「松山選手からは『またあの大会が日本でできるなんて、自分もうれしいです』と言われました。“自分の監修したコースで”というのは言葉にはしませんでしたけど、そういう思いを込めて『御殿場で』と」。10代の松山が抱いた夢が、次の世代につながっていく。