少子化なのに「不登校」激増の異常事態 「無理して通わなくていい」は正しいのか
子供を指導できない教育現場
横浜市の公立小学校に勤める教諭が言う。 「パワハラが問題視されるのはいいとしても、パワハラと厳しい指導の境界があいまいなので、子供に少しでも厳しいことを言うと、すぐ『パワハラだ』と言われてしまいます。学校でも問題になるし、保護者からもすぐ苦情がくるので、子供が明らかにしてはいけないことをして、ちゃんと注意しなければならない場面でも、厳しく指導することができないのが現実です。児童というお客様に教諭たちが気を遣っているようだ、と言っても過言ではありません。しかし、子供にはまだ知識も経験もないのだから、違うことは違う、ダメなことはダメだと教えてあげないと、成長する機会を得られません」 同じ地域の別の教諭にも話を聞いた。 「教室での大きな声や音に耐えられない子供が以前より増えている、と指摘されているのは知っているし、たしかにそう感じます。でも、大声で騒ぐような子供を厳しく指導することができなくなっていて、そういう環境が嫌いな子供にとっては、教室の環境は悪くなっていると思います。また、私たち教諭は、子供の意思をできるだけ尊重するように指導されているので、なにかが嫌だという子に、無理にさせることがしにくい。嫌なことにも耐えるように、という指導ができないのです」 どうしても耐えがたいことに、耐えるように指導する必要はない。しいたけが嫌いな子に無理に食べさせても、ますます嫌いになるだけだろう。でも、やらなければならないことはあるし、耐えて乗り越えなければならないこともある。自分で自分を律する方法をまだ知らない子供に律し方を教えるのは、教育の責務であるはずだが、いまの教育はそれを避けている。その姿勢では、子供は学校で少しでも嫌なことにぶつかれば、すぐに通いたくなくなるのではないだろうか。 また、教育現場の意識は、親の意識と表裏一体である。小学校高学年の子供をもつ母親が言う。 「知人のお子さんは幼稚園のとき、サッカーに一生懸命取り組んでいましたが、あるとき足をけがしました。それからは、おかあさんはお子さんに『無理しちゃダメだよ』『頑張りすぎてはいけないよ』と言い続けたそうです。子供がまたケガをしたら大変だ、と心配する気持ちは私にもよくわかります。でも、それからその子は、運動も勉強もがんばらないようになってしまい、おかあさんは悩んでいます」 こうして頑張れなくなった子供が「学校に行きたくない」と言ったとき、「無理しなくてもいいんだよ」と親が答えれば、子供は不登校になるだろう。