韓国大統領の拘束失敗 警護兵ら200人の壁で阻止、当局は尹氏の態度に「深い遺憾」
【ソウル=桜井紀雄】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が宣布した「非常戒厳」について内乱容疑で捜査している捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」は3日、ソウル市内の大統領公邸に捜査員を派遣して尹氏の拘束令状の執行を試みたが、失敗した。公捜処が発表した。大統領警護処の要員ら約200人が建物への立ち入りを阻み、約5時間半にわたり対峙(たいじ)した。 【写真】ソウルの尹錫悦大統領公邸前に到着した公捜処の車両 捜査機関が現職大統領の拘束令状執行を試みるのは初めて。大統領の身柄拘束に向けた前例のない捜査は、仕切り直しを迫られることになった。 令状の有効期限は6日まで。公捜処は拘束令状の再執行について「検討後に決定する」とした。「法に基づく手続きに応じない被疑者の態度に深い遺憾の意を表する」と尹氏を批判。警護処長らに対し、公務執行妨害容疑で4日までに出頭するよう求めた。 3日午前8時過ぎ(日本時間同)に公邸の敷地に入った公捜処の捜査員や警察官計約100人は公邸建物の約200メートル前まで近づいたものの、警護処側が立ちふさがり、小競り合いも起きた。警護処側には公邸警備を担う軍部隊の兵士も含まれ、バスなどでバリケードを設置。一部要員は火器も携帯していた。公捜処は「安全上の懸念」から執行中断を決めた。 公邸前には尹氏の支持者が集まり、弾劾や身柄拘束に反対するデモを連日展開。尹氏は1日、支持者らに「皆さんとともにこの国を守るために最後まで闘う」と記した手紙を送り、徹底抗戦の姿勢を鮮明にした。 尹氏の弁護団は3日、公捜処が軍事機密保護区域である公邸に機動隊を同行して違法に侵入したと批判。法的措置で対抗する方針を示した。警護処も公捜処が「無断侵入した」とし、法的責任を問うと強調した。 国会の弾劾訴追を受け、尹氏の罷免の可否を審理する憲法裁判所は3日、2回目の弁論準備手続きを行い、14日に初弁論を開くことを決めた。