商船三井、通期経常3650億円。上方修正、自社株買い1000億円
商船三井は31日、2025年3月期の連結経常利益が前期比41%増の3650億円になりそうだと発表した。従来予想を150億円上回る。上期のコンテナ船運賃市況の高騰が寄与するほか、ケミカル船市況が好調なエネルギー事業が上振れする。年間配当も従来計画比20円増の1株当たり300円(前期は220円)に引き上げる。総額1000億円を上限に自社株買いを行うことも明らかにした。 通期の連結業績予想は売上高が10%増の1兆7900億円、営業利益が48%増の1530億円、純利益が34%増の3500億円。 紅海情勢の正常化の時期を従来は12月以降と想定していたが、今回、来年4月以降に変更。為替の前提条件は1ドル=151・19円に変更した。 セグメント別経常利益予想は、製品輸送事業は94%増の2440億円を見込む。このうちコンテナ船は3倍の1570億円に拡大する。 コンテナ船のスポット運賃市況は年度末にかけてコロナ禍前の水準に落ち着くと予測。自動車船は在庫水準適正化で荷動きが落ち着く可能性を織り込み横ばいを見込む。ロジスティクスは仕入れ運賃高騰継続により下振れを見通す。 エネルギー事業は49%増の1000億円を見込む。従来予想から50億円上方修正した。「ケミカル船の押し上げ効果が大きい。エネルギー事業として過去最大の利益を見込む」(濱崎和也取締役専務執行役員) ドライバルク事業は52%減の180億円と予想。買船に伴う一時的な費用の影響で従来予想比40億円下方修正した。 ウェルビーイングライフ事業は33%減の60億円を見込む。不動産は安定利益を確保し、フェリー・内航RORO船も想定通りだが、12月就航予定のクルーズ船の初期投資がかさみ前回予想から35億円引き下げた。 同日発表した4―9月期連結決算は、売上高が前年同期比14%増の9006億円、営業利益が81%増の891億円、経常利益が61%増の2490億円、純利益が64%増の2466億円。9月末時点で想定リース債務9000億円を加味した自己資本比率は49%となっている。 ■自社株でM&Aも 商船三井は普通株式3000万株(発行済み株式総数に対する割合8・28%)、取得総額1000億円を上限に、今年11月から来年10月末までに自社株買いを行うことも発表した。 橋本剛社長は「23年度の実績と24年度の予想の利益計画が経営計画を大きく上回っていることに加え、持ち分法適用会社のオーシャンネットワークエクスプレス(ONE)が増配を決定したことを受け、自己株式取得を決めた」と説明した。 取得した株式は、戦略的M&A(買収・合併)などの成長投資に活用する可能性を検討する。グループ役職員に対する株式報酬や消却に充てる可能性もある。 M&Aの対象としては、「LNG(液化天然ガス)関連など自力で成長を目指す分野ではなく、収益の柱に育てていきたい海外での物流や不動産、洋上風力などの分野で大型M&Aを狙っていきたい」(橋本社長)考えだ。 そのほかロシア関連事業のうち、砕氷機能を有するLNG船3隻とコンデンセートタンカー1隻(合計投資額約1056億円)の貸船契約について、欧米の制裁強化に伴い契約スキームの変更について関係者と協議を開始したことも公表した。
日本海事新聞社