活用してる?「スマートウォッチ外来」受診者増加…「25%は無症状」悪性の不整脈の早期発見も可能
25%は無症状…医師が“最も避けたい不整脈”という「心房細動」とは?
不整脈の一種である心房細動について滝村医師は、「一番なってはいけない不整脈」と話す。心房細動自体で死に至ることは少ないが、脳梗塞をはじめとする血栓の閉塞性疾患や、心臓の機能が衰える心不全の引き金になる。さらに認知症の発症率は2倍になるという報告もある。 「心臓は、上下左右での4つの部屋に分けられています。正常な心臓は、4部屋の上に位置する心房(しんぼう)から電気の興奮が出て収縮、そのあと下部屋の心室(しんしつ)に電気が通り収縮。一定で規則正しい収縮を繰り返して、全身に血液が送られます。 一方で心房細動になると、心房で電気興奮が異常に暴れまわり、けいれんしているようになります。読んで字のごとく、心房が細かく動いた状態。すると下の部屋の心室には不規則に電気興奮が伝えられ、心電図の波形がバラバラになったり間隔があいたりします」 これにより動悸や息切れ、ひどい場合は胸が圧迫されるといった症状があらわれる。 「症状があれば医療機関を受診するのでまだいいのですが、問題なのはそのうち25%が無症状ということ。症状がないので心房細動と診断されることなく進行、あるとき前触れなく脳梗塞や心筋梗塞が起こるというパターンも少なくありません」 くわしくは解明されていないが、心房細動は男性のほうが1.5倍発症しやすいことが報告されている。脳梗塞や心筋梗塞が起こるのは、心房細動によって心臓内に血栓ができやすくなるからだ。 「心臓の動きが正常なときは血流が一定で速いのに対して、けいれん状態が続く心房細動は心臓が収縮しにくいため“ちょろちょろ”としか血液が流れません。そして電気興奮が心臓の下の部屋に通ったときだけ一気にワーッと血液が引き込まれます。 これが繰り返されることで血液がよどみ、いちごゼリーのような血栓ができるのです。この血栓が流れ出し、心臓の血管に詰まれば心筋梗塞、脳に詰まれば脳梗塞。腕や脚の血管、腸に流れることもあり、命にかかわる恐ろしい病気なのです」 しかも、心臓の血栓が原因で起こる心原性脳梗塞は、血栓が大きく重症化しやすい、と滝村医師は言う。 「心原性脳梗塞は約50%の人が死亡や寝たきり、車いす、介助が必要な状況になります。『若いからまだ大丈夫』と安心してはいけません。脳梗塞の患者さんの中には、お子さんがまだ中学生という、働き盛りのお父さんもいます。 症状の有無にかかわらず、心房細動が早めにわかることは、その後の人生を考えるとラッキーなこと。スマートウォッチ外来はそんな患者さんを救える場所でありたいと思っています」