「“陰キャ”とつき合うな――」…念願の「有名私立中学」に合格した中学生男子を待ち受けていた「ヤバすぎる学校生活」
憂鬱な再会
この有名私学のなかでもとくに優秀な卒業生が辿る進路である。そんな明るく無限に拡がる可能性、明るい将来に思いを馳せたのも束の間、入学式が始まると、天国から地獄へ。イクミ君は暗い気持ちにさせられたという。 「元々通っていた進学塾で一緒だったセキ君も同じクラスにいることがわかりました。塾に通っていた頃、息子とトラブルともいえないトラブルもあったので。祝いの場である入学式ですが、とても親子共々、嫌な気持ちで家路に着きました」 イクミ君のママ(45)は、このセキとの入学式での再会時によぎった不安を、当時を振り返りつつ、こう語った。 進学塾でのセキとイクミ君との間に起きたトラブルともいえないトラブルとは、「お前ではこの中学校は受からない」と、かなりしつこく一方的にセキが絡んでくる、筆箱を隠すといった類のものである。とはいえイクミ君もママも、どこか楽観しているところもあった。以前のセキとの逆縁はあくまでも進学塾に通っていた当時、小学校時代の話である。神戸市内でもよく知られた伝統校として知られるここ、しかも学業優秀な生徒が集まるクラスだ。 イクミ君が小学生から中学生となり成長したのと同じく、セキもまた成長している筈……、そんな期待もあった。 小学校時代のからかい、いじめ――、いじめられた側もいじめた側も互いに成長し、「俺、お前によくいじめられたな」「あのときは悪かったな、でも、いじめられるお前が悪い」と互いに笑いながら軽口を叩き合う、腐れ縁の親友同士となれるかもしれない。そんな期待がイクミ君、そしてイクミ君ママにもあったという。今、子どもを持つ親の世代であれば、そうした期待を持つことはごく自然なことだろう。 そして入学後、セキから声を掛けられたイクミ君は、もともとの物静かで温厚な性格でもあり、セキ以外に積極的にクラスの友人と交わることをしなかった。 対してセキは、何に対しても積極的、物おじしない性格である。セキの同級生やかつてと今教えている教員によると、そのキャラをひと言であらわすなら、良くも悪しくも「やんちゃ」の一語に尽きる。どういう意味でもクラスの中心的存在、それがセキである。