「実質0円」で建設した東京・豊島区新庁舎 ハコモノ計画に一石
2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて建設が急がれる新国立競技場は、総工費が約2520億円と報道されたことで税金の無駄遣いではないか? との批判が高まりました。世論の反発を受けて、政府は計画を見直し1500億円程度まで建設費を縮減するとしています。 かつて、ハコモノは全国で盛んに建設されてきました。公共事業による恩恵を受けた地域も少なくありません。しかし、昨今は財政が厳しくなったことやインフラがそれなりに整ってきたという情勢的な変化もあり、ハコモノ建設をはじめとする公共事業に対する有権者の視線は厳しくなっています。
9階までが区役所、11階以上はマンション
5月7日、東京都豊島区が新庁舎の開庁式が開かれました。それまでの豊島区の庁舎は1961年に竣工したものだったために老朽化が激しく、20年近く前から建て替え計画が話し合われてきました。そして豊島区庁舎は地上49階・地下3階のモダンなビルに生まれ変わったのです。 「豊島区の旧庁舎は東日本大震災で壁や柱などが損傷していました。それらを修繕する必要もありました。また、設計が昔のままだったので窓口はいつも混雑し、区民のみなさんに迷惑をかけていました。それらの問題を一気に解消するためにも、新庁舎の建設は豊島区の悲願でもありました」(豊島区施設管理部庁舎建設室) 計画が浮上した当時、豊島区の財政は火の車でした。1996年には財政難を理由にいったんは新庁舎建設が白紙に戻されました。その後も財政は好転せず、1999年には豊島区の借金は872億円まで膨らんでいます。 財政健全化が優先課題だったため、豊島区に新庁舎を建設する余裕はありませんでした。しかし、その間も庁舎問題はくすぶり続けていたのです。 「区民にとって区役所が必要不可欠な施設であることに誰も異論はないでしょう。しかし、税金を使って庁舎を建てるわけですから、建設費用をまったく考えないわけにはいきません。巨額な建設費になれば、区民の理解は得られません。そこで、どうにか税金を使わずに庁舎を建設する方法を模索したのです」(同)