歴史と伝統、実力を兼ね備えたウイスキー。グレンモーレンジィのおいしさの秘密とは。
スコットランドのハイランド地方で、1843年に誕生したシングルモルトウイスキーが、グレンモーレンジィだ。150カ所以上の蒸留所が存在するスコットランドのなかで、最も背の高い蒸留器から生まれ、最高級のオーク樽で熟成されたシングルモルトウイスキーは、フルーティーで華やかな味わいを特徴とする。 【画像】もっと画像を見る(6枚) そんな歴史と伝統、実力を兼ね備えたグレンモーレンジィが、近ごろ2つの改革を行った。ひとつが、2011年以降、23もの世界的な賞を受賞しつづけている銘酒「グレンモーレンジィ 18年」のパッケージデザインやネーミングをリニューアル。「グレンモーレンジィ インフィニータ 18年」として新たに発売されたこと。 もうひとつが「グレンモーレンジィ」のフラッグシップウイスキーである「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」のグレードアップ。熟成期間を2年延長し、12年熟成のシングルモルト「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」として新たなスタートを切ったのだ。 こうした改革を指揮するのが、グレンモーレンジィ蒸留所の最高蒸留・製造責任者であり、グレンモーレンジィのすべてのウイスキー造りに携わるビル・ラムズデン博士だ。 世界屈指のウイスキークリエイターとして数々の受賞歴を誇る彼が際立っているのは、ウイスキー造りの経験に加えて、その範疇(はんちゅう)にとどまらない幅広い知見を備えていることだろう。バイオケミストリー(生化学)の博士号を取得する科学的なバッググラウンドや、芸術的センスによって、ビル博士はウイスキーの世界に数々の革新をもたらしてきた。 そんなビル博士が9月に来日。イベント「グレンモーレンジィ ハウス2024」でのトークショーに登壇したほか、プレスの取材に応じ、「グレンモーレンジィ インフィニータ 18年」と「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」に関することを中心に多くを語ってくれた。 ビル博士が人生で初めて飲んだウイスキーは偶然にも10年熟成のグレンモーレンジィで、1984年、24歳の学生のときだったそう。そして、時を経てグレンモーレンジィ蒸留所の所長に着任したビル博士。所長になって1週間後に18年熟成を初めて飲むことになる。 「率直に言って、自分にとってあまり好みではありませんでした。シェリー樽のニュアンスがあまりに強くて、蒸留所の個性をまったく感じられなかったし、グレンモーレンジィらしさも控えめでした」 そこから4年後、ビル博士はウイスキー造りの総監督であるマスターディスティラーに就任。18年熟成の改革に乗り出していく。 「蒸留時に最初に出てくる蒸留液をヘッズ、中間をハーツ、最後をテイルズと呼び、カットポイント、つまりこのなかのどの部分をどのくらい取るのかによって、ウイスキーの原液であるニューメイクスピリッツの個性が変わってくるんですね。手始めにこのニューメイクスピリッツをたくさんテイスティングしたところ、そもそもそれが自分の好みではなかったんです。原因はハーツの部分の割合が大きすぎていたため、不純物が多く混ざっていたことにありました」 そこでビル博士は、ハーツのカットポイントを短くし、よりフルーティーさを感じられるようなバランスにニューメイクスピリッツを変えていった。 「けっこう時間がかかりましたが、自分の思いどおりのテイストに変えることができました。今、18年を飲むと、“あっ、これはグレンモーレンジィだ!”とすぐに感じられるようなわかりやすい味わいになっているはずです。おかげさまで味わいを変えて以降、いろいろな賞を受賞しているので、自分の判断は正しかったのだと思います」 そして、もうひとつ。フラッグシップウイスキーを「グレンモーレンジィ オリジナル 10年」から「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」へとグレードアップしたことに関して。ビル博士はこう話す。 「4年ほど前にグレンモーレンジィのさまざまなウイスキーに対して、さらによくすることができないかと考え、いろいろ試みました。そのなかで、“オリジナル 10年”に関しては、同じレシピ、同じ樽の比率で11年熟成、12年熟成にトライしてみたのです。結果的に12年熟成のほうがよりグレンモーレンジィらしく、そのうえ、舌触りがクリーミーで甘さが引き立っていました」 それを踏まえて、ビル博士は自分の感覚を確認するかのように、グレンモーレンジィのテイスティング部門に所属する、利き酒の能力にたけた35人にブラインドテイスティングを敢行。どちらがどちらとは言わずに従来の10年と試作した12年を味わってもらい、好きなほうを選んでもらったところ、95%の人が12年熟成を選ぶ結果となった。 「10年は繊細で輝かしくフレッシュ感があります。柑橘系やピーチ、洋梨などの風味も感じられるはずです。そのようなすばらしい10年の味わいに加えて、12年はクリーミーさがあり、ハチミツやバニラの風味が感じられます。果実の味わいもありますが、10年とはバランスが異なります。12年は10年のおいしさを継承しながら、より良質な味わいに進化したのです」 そして、誕生した「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」は、グレンモーレンジィらしさ、テロワールのような蒸留所独自のニュアンスを最も表現できているウイスキーだと話すビル博士。 では、今回、新たに登場した「グレンモーレンジィ インフィニータ 18年」と「グレンモーレンジィ オリジナル 12年」は、それぞれどんな飲み方をしたらその個性をしっかりと味わえるのだろうか? 「“グレンモーレンジィ インフィニータ 18年”は滑らかなウイスキーなので、そのままストレートで飲むことをオススメします。“グレンモーレンジィ オリジナル 12年”は、ハイボール、オンザロック、カクテルなどお好きな飲み方をしていただけたら。楽しんで飲んでいただくことが一番大切だと思っています」 稀代のウイスキークリエイター、ビル・ラムズデン博士が生み出したグレンモーレンジィは、ほかのウイスキーとどこが、なにが、違うのか? ときにはそんなことも意識し、思考を巡らせながら飲んでみると、いつもとは異なる新たなウイスキー体験ができるはずだ。 問/MHD モエ ヘネシー ディアジオ https://www.mhdkk.com/brands/glenmorangie Photo&Text:Hiroya Ishikawa
朝日新聞社