自由自在な「夢の照明」誕生 第二次LED革命 ~照明業界 未来予想図~
「制御」の解放
もう一つの「制御の解放」も、自由度を高める重要な要素になる。照明制御市場は以前から存在していたが、有線式制御が中心だった。提供していたのも電機大手が中心で、寡占市場になっていた。それ以外も舞台照明などの特殊・専門用途が多かった。 しかし、LED化による機器の「デジタル化」により、多種多様な手段での制御が可能になった。 有線制御では、欧州を中心にDALI(Digital Addressable Lighting Interface)というオープン制御規格が注目されるようになった。照明制御に関して寡占市場となっていた国内は、提供企業の囲い込み的な提案が中心。一方、オープン制御が広まれば、さまざまな器具メーカーの多様な照明から製品を選び、制御できるようになる期待があった。 LED化で無線制御も容易になった。10年代にスマートフォンやタブレット端末が爆発的に普及し、ブルートゥースなどの無線通信規格も一般化した。建築市場の通信インフラ環境も、スマホなどの無線通信機能を備える電子機器を操作デバイスとして活用できるように変化していった。 光と制御という2つの「解放」は、従来照明にない使い方やあり方の可能性という点でも、LEDや有機EL、レーザーなどを含む固体光源照明(SSL)全体に対する期待値だった。SSLとして考えると、照明用はLED光源が現時点で主流だが、ディスプレー用は有機EL、自動車用はデザイン性の高い外装照明やレーザーヘッドライトなど、用途によって使われる光源に変化もみられる。 LEDによる自由自在な照明のあり方について、10年代半ばに照明専業器具メーカーの方がぽつりと「私が入社した時には想像すらしなかった。よくよく考えると夢の照明なんですよね」と話していたことがとても印象に残っている。それほどまでに、10年以前には「有り得なかった」照明が、それ以降の技術革新によって当然のように使えるようになった。これまでの状況を知らないとその凄さを図ることすらできないものだと感じた覚えがある。 ちなみに、「IoTは、昔で言うユビキタスネットワークだ。DALIよりも前からマルチベンダー対応として提案され、コンセプト自体は1990年代以前からも存在していた」と話す大手電機メーカーの方もいた。こうした点からも、DALIをはじめ、無線制御などマルチベンダー対応へと当たり前のように可能性を広げたLEDによる技術革新は、レトロフィットにとどまらない、凄まじい影響を照明業界にもたらしたと言えよう。