街なかスタジアム、動員最多・商店街利用も倍増…サンフレッチェ本拠「ピースウイング」
広島市の街なかに今年2月に開業したサッカー専用スタジアム「エディオンピースウイング広島」(Eピース、広島市中区)がにぎわいを見せている。本拠地とするJ1リーグ、サンフレッチェ広島の観客動員数は過去最多を記録。主要都市の中心部に立つスタジアムは全国でも珍しく、街の活性化の主役となっている。(新田修) 【写真】近年完成した多機能型スポーツ施設
「平和公園と一体」
今月3日、J1の京都サンガFC戦が行われ、繁華街や観光地でサンフレッチェの紫色のユニホームを着た大勢の人たちが買い物や食事を楽しんでいた。Eピース近くの商店街の関係者によると、試合日の利用客が以前の2倍以上に増えたという。同市の飲食店経営の男性(32)は「(スタジアムに)広場やショップもあり一日中過ごせる」と笑顔を見せた。 約2万8500人収容のEピースは平和記念公園や目抜き通りの「広島本通商店街」から徒歩約15分。観光名所の広島城があるエリアと歩行者用デッキでつながる。日本のスタジアムは郊外の運動公園にあるケースが多く、異例の好立地だ。市中心部の公園内に総事業費約285億円で整備され、広島市が所有、サンフレッチェが指定管理者として運営する。
広島では2010年代にスタジアム建設の議論が本格化した。沿岸部の公園などが候補地に挙がったが、クラブは原爆ドームなどに近い中心部にこだわった。行政などと折衝を重ねたクラブの久保 允誉まさたか 会長(74)は「平和記念公園という鎮魂の場、スタジアムという楽しい場が一体となって広島のにぎわいを創出すること
1試合除き完売
昨季までの本拠地は市中心部から公共交通機関で約40分かかった。昨季のホーム戦平均入場者数は1万6128人で、車で訪れて試合を見るだけで帰るサポーターもいた。クラブによると、今季J1リーグ戦のチケットは平日開催の1試合を除いて完売。ここまで平均2万5526人、計45万9474人を動員し、1994年の37万8195人を上回りシーズン最多記録を更新した。クラブの売上高は昨季の約42億円を大きく上回り、70億円に上る見込みだ。 JR広島駅の東側には、プロ野球・広島東洋カープの本拠地で約200万人を動員する「マツダスタジアム」がある。広島県などは、同駅やマツダがあるゾーンと、Eピースがあるエリアを都市活性化の核と位置づける。県都市圏魅力づくり推進課・水本全彦担当課長は「(Eピースは)県内外から多くの方が訪れており、県全体の活性化につなげたい」と話す。サンフレッチェの仙田信吾社長(69)は「東のマツダとともに広島の発展の一翼を担いたい」と意気込む。