ロールス・ロイス・スペクター 詳細データテスト 品格ある走り 新時代ロールス 革新的EVではない
キックダウン加速
20-40mph(32-64km/h):1.8秒 30-50(48-80):1.9秒 40-60(64-97):2.3秒 50-70(80-113):2.8秒 60-80(97-129):3.3秒 70-90(113-145):3.9秒 80-100(129-161):4.7秒 90-110(145-177):5.6秒
制動距離
テスト条件:乾燥路面/気温11℃ 30-0マイル/時(48km/h):8.2m 50-0マイル/時(80km/h):22.9m 70-0マイル/時(113km/h):44.7m 60-0マイル/時(97km/h)制動時間:3.08秒 ■ライバルの制動距離 ロールス・ロイス・ゴースト(2021年) テスト条件:乾きつつある路面/気温9℃ 30-0マイル/時(48km/h):8.2m 50-0マイル/時(80km/h):22.9m 70-0マイル/時(113km/h):46.6m
結論 ★★★★★★★★★☆
スペクターは、曰く、ロールス・ロイス・モーターカーズの新時代到来を告げるものなのだとか。非常に高額だが、同時に意義深い存在でもある。これこそがロールス・ロイス初の電動モデルなのだから。 このクルマが、ロールスの走りや所有にもたらすものは決して小さくはない。ゼロエミッションという先進性、賞賛や憧れ、世界最高峰のラグジュアリー、快適で洗練されたクルージング、そして、控えめながらもほかにはないようなドライビングの魅力。そこに、日常使い可能な航続距離が加わる。しかし、ただの日常ではない、スペシャルな毎日が送れるクルマだ。 とはいえ、電動パワートレインはこのクルマを完璧なロールスたらしめているか。グッドウッドの神格化された快適性や洗練性のルールは細部にまで行き渡っているか。そしてスペクターは、まったく新しいマーケットを生み出せたのか。どれも答えはノーだ。 100年と少し前、ヘンリー・ロイスがエンジンでやったことを考えれば、スペクターはEVとしてそこまでのことをなしていない。たしかにすばらしい点も、野心的な点も数多い。しかしあくまでもロールス・ロイスとしては、という注釈付きの範疇に留まる。 ■担当テスターのアドバイス ◆イリヤ・バプラート エフォートレスドアというのはすばらいいアイデアに思えるが、実際のところ個人的には扱いあぐねた。自力で開閉しようとすると、ドアが挑んでくるように感じるのだ。もうちょっと頭のいいソフトウェアがほしい。 ◆マット・ソーンダース かつてのBMWに見られたような、ディスプレイ下のショートカットキーはじつにありがたい。1~8に、車線維持オフでも、スピリット・オブ・エクスタシーの出し入れでも、好きな機能をあてがえるのだ。 ■オプション追加のアドバイス パンテオングリルのイルミネーションは標準装備だが、フライングレディのそれはオプション。スターライトヘッドライナーと合わせて、どれも人気アイテムなので、どうせなら全部つけておきたい。 ■改善してほしいポイント ・より小さいホイールにランフラットでないタイヤという仕様があれば、キャビンの静粛性はより高まるはずだ。 ・バッテリー容量に対する実用量をもう少し増やすか、BMWグループの第6世代バッテリーセルを導入し、リアルな航続距離の向上を。 ・ブラックバッジみたいな高性能版も見てみた、EVだとブルーフラッシュとか銘打って。
マックス・エドレストン(撮影) マット・ソーンダース(執筆) イリヤ・バプラート(執筆) 関耕一郎(翻訳)