望まない妊娠に「どうせ男連れ込んで育児放棄」とソーシャルワーカーがキレた理由『新宿野戦病院』
7月24日に放送された『新宿野戦病院』(フジテレビ系)第4話では、“望まない妊娠”が取り上げられる前衛的な内容だった。 【関連画像】今夜放送、『新宿野戦病院』第5話 終盤、歌舞伎町に構える病院・聖まごころ病院で、地元の先輩との子供をお腹に宿した16歳の家出少女・カスミ(谷花音)の出産シーンがある。無事に出産を終えたカスミは「最悪トイレか何かで産んで、赤ちゃんポストか何かに置いてこようって思ってました」と告白。 その際、看護師の堀井しのぶ(塚地武雅)から赤ちゃんポストは東京にはなく、熊本と北海道にしかないことを聞かされるが、続けてカスミは「でも、赤ちゃんの顔、見たら、何か、自分勝手だけど『離れたくない』って思います」と母親になることに前向きな姿勢を見せる。 すると医師のヨウコ・ニシ・フリーマン(小池栄子)やNPO法人に務める南舞(橋本愛)から祝福される中、聖まごころ病院の院長・高峰啓介(柄本明)の一人娘でソーシャルワーカーのはずき(平岩紙)が登場して、「何考えてんの?馬鹿じゃないの?」「勝手に子供つくって、勝手に産んで、捨てようと思ったけどやっぱり可愛い?」とエキサイト。はずきは止まらずに「馬鹿か、想像力が足りない」「あんたみたいな馬鹿な女は母親なんかになれない、なる資格がない」「どうせ男連れ込んで育児放棄」と声を荒げた。 高峰家は病院の跡取りとして男性を強く望まれており、女性として産まれたはずきは言ってしまえば“望まれない子供”である。ただ、家族の期待に応えるため、はずきは医大を何度も受験した過去を持つ。そして、何度受験しても医大には合格せずに医者になる道を断念するが、医者と結婚するために婚活にいそしむ日々を送っている。 望まれない子供として生きていくことがいかに困難であるのかを知っているはずきからすれば、今まさに望まれない子供が望んでいなかった親に育てられようとしている現状は黙っていられなかったのだろう。望まれない子供として生きることの苦悩、その望ましい子供を育てようとする親に対する怒りが、平石の鬼気迫る演技から嫌というほど感じた。 また、今回の出産を幸せな空気で終わらせなかった宮藤官九郎の脚本には驚かされる。従来のドラマであれば、出産をキッカケに母親に“母性”が芽生えてハッピーエンド、という展開になりがち。しかし、出産が大変であることは当然ではあるが、出産を終えた後もとても大変である。 そこがスルーされ、「無事に子育てできるのか?」とモヤモヤ感を覚えたまま終わるドラマは珍しくない。だからこそ、幸せな空気をぶち壊して、はずきが望まれない子供を育てようとしているカスミに異議を唱える様子はとても新鮮。なにより、望まない妊娠が出産を終えたからといって解決する事態ではないことを、改めて痛感させられた。