リクルートのスキマバイト「エリクラ」のひどすぎる実態 「マンション清掃43分、836円」うたい文句の罠
■バイトリーダーから「タイミー、邪魔!」 話はずれるが、キヨシさんはこの間、スキマバイトのタイミーも利用した。大きなトラブルはなかったものの、タイミー経由の働き手がほかのアルバイトたちから見下されていると感じることがたびたびあったという。 ある大手の飲食チェーンでは、厨房の隅でマニュアルに目を通していたところ、バイトリーダーの女性から「タイミー、邪魔!」と言われ、押しのけられたという。もはや「タイミーさん」とも呼んでもらえないらしい。
スキマバイトの問題をリポートすると、「別のアプリを使えばいいのに」「不満があるのにアプリを利用している人も悪い」といった指摘をされることがある。しかし、それは問題のすり替えだ。そもそも選択肢としてアルバイトの間で格差が生じるような働かせ方が存在していることの是非を考えるべきだ。 企業がスキマバイトを重宝する背景には人手不足がある、との指摘はよく耳にする。人手不足を解消するためには労働生産性の向上が不可欠だというのも定番のロジックである。
しかし、私にはいまひとつピンとこない。人手が集まらないのは、まともな条件や待遇の仕事ではないからということも一因なのではないか。そもそもスキマバイトアプリを使えば人が集まるなら、人手不足ではないだろう。社員一人当たりの付加価値額を上げるという大義名分のもとに、採用や研修にかかる最低限の費用を削り、代わりに劣悪な条件で働く人たちを生み出す仕組みをつくることが、本当に社会や経済の活性化につながるのか。
私の心情を代弁するように、キヨシさんがこう言った。 「病気や障害があってスキマバイトの収入に頼るしかないという人も一定数いるはずです。こんな条件の働かせ方が広まっていくのは健全とは思えないんですよね」 本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 :ジャーナリスト