「監督と一緒に甲子園へ!」春日部共栄の名将、“最後の夏”は終わらない!浦和学院を9回逆転し4強へ【24年夏・埼玉大会】
<第106回全国高校野球選手権埼玉大会:春日部共栄6-5浦和学院>◇24日◇準々決勝◇レジスタ大宮球場 【トーナメント表】埼玉大会 ここまでの結果一覧 「うちの選手は凄い。こんなことをやるなんて」とは来春で退任が決まっている春日部共栄・本多監督。本多監督も試合後大興奮したこの試合。浦和学院・森監督も「伝統の一戦」と評したこの試合はその前評判通り最後までもつれる展開となった。 レジスタ大宮球場・第2試合は、Bシード・春日部共栄 vs Dシード・浦和学院。昭和、平成と幾多の名勝負を演じてきた埼玉県のライバル校同士の一戦。先発は春日部共栄が2年生左腕・大野 泰輝、一方の浦和学院は「浦学のウェイクフィールド」と森監督が評する背番号20の長身右腕・山浦一心(3年)が登板し試合が始まる。 序盤は春日部共栄ペースで試合が進む。先制したのは春日部共栄であった。 2回表、5番・成井 健真(3年)、6番・髙田 憲志(3年)の連打で無死一、三塁とし、7番・野口流維(3年)がきっちりと犠飛を放ち幸先良く1点を先制する。 一方、浦和学院も4回裏、一死から2番・月山 隼平(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、二死後、4番・西田瞬(2年)がレフト越えのタイムリー二塁打を放ち同点とする。 だが、春日部共栄も5回表、この回からマウンドに上がった最速148km右腕、3番手・山崎 拓海(3年)の代わり端を攻め、2番・三田村幸輔(3年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く佐藤 隆成(2年)が左中間へタイムリー二塁打を放ち1点を勝ち越す。 その後は浦和学院・山崎、春日部共栄・大野両投手が踏ん張り試合は2対1のまま終盤へと進む。 迎えた8回裏、浦和学院打線がついに大野を捉える。 先頭の石田 陽人(2年)がセーフティーバントを決めると続く月山はきっちりと送り一死二塁とする。ここで3番・三井 雄心(3年)がショート強襲のタイムリーヒットを放ち同点、さらに続く西田もレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とすると、二死後、6番・浅田 健輔(3年)がレフト前タイムリーを放ち勝ち越し、さらに続く落合 隼飛(2年)もライト線へタイムリー二塁打を放つなどこの回3点を奪い4対2と逆転に成功する。 これで試合は決まったかと思われた。だが、今年の春日部共栄は簡単には終わらない。 「攻撃前に最後まで諦めないのがうちの野球なので『笑顔でやれ』と」 本多監督に発破をかけられた9回表、春日部共栄は一死から2番・三田村がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く佐藤が左中間へタイムリー二塁打を放ちまず1点、さらに続く平尾 拓翔(3年)もセンター前ヒットを放ち一死一、三塁とすると、浦和学院ベンチは岡部 修弥(2年)へとスイッチする。 だが、5番・成井は死球で出塁し一死満塁とすると、続く髙田のファーストゴロが相手の野選を誘い同点とする。二死後打席には8番・坂寄 孝太(3年)が入る。本多監督曰く、「ポカをするので私も現役時代セカンドということもあり厳しく言ってきて一番怒られてきた子。何度も代える代えないの話になっても何度も喰らいついてきた。本当にかわいい」と言う、孝行息子がライト前に逆転となる2点タイムリーを放つなど、春日部共栄が土壇場で4点を奪い6対4と再逆転に成功する。 昨夏甲子園メンバーが多く残る浦和学院も簡単には終わらない。 その裏、8回途中からマウンドに上がった春日部共栄の2番手・松村 侑真(3年)に対し、この回先頭の吉田 塁(3年)が四球で出塁すると、一死後2番・月山がレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とする。さらに相手のパスボールで一死二、三塁とチャンスは広がるが、後続が3番・三井の内野ゴロ1点のみに終わり万事休す。 春日部共栄が6対5と逆転で、夏は対浦和学院戦23年ぶりの勝利を飾った。23年前というと浦和学院がエース大竹寛を擁していた時代というから久方ぶりだ。 まずは昨夏覇者・浦和学院、「今年の共栄さんは粘り強い良いチーム。今日はずっと劣勢だったので8回の逆転劇は見事。選手達は胸を張ってもらいたい。ここからの3つは元々岡部と鈴木 由馬(3年)を後ろに回す予定でした。9回も相手の気迫が僅かに上回った結果。山崎はよく投げたし責められない。岡部、鈴木と最後打たれたら仕方ないという投手が投げた結果なので。今年の代は秋・春と悔しい思いしかしていないのに今日こういう試合ができたことを誇りにしてもらいたい。勝てなかったのは監督の責任」と森監督は悔しさを滲ませながら選手への労いと秋以降の反撃を誓った。最後に、昨春の段階では「自分は引っ張ったり背負うタイプではない」と言っていた三井が試合後、「自分一人じゃないので。主将として自分の結果が出ない時や気持ちが落ちている時に周りが支えてくれたので感謝している。上では長打力に磨きをかけたい」と言っていた。彼の精神的な1年間の成長を見届けてきた気になり感慨深かった。上で見たい選手である。 一方の春日部共栄は、「要所要所ポカもあったけど想定内(笑)。よう頑張った。大野本人には8回に高めに浮いた所を痛打されてあえて厳しく言っておいたけどよく投げた。大野は調整がうまくいった。怪我もあってこの試合に向けて調整してギリギリ間に合った」と、本多監督もびっくりした表情。この日は大野に尽きる。 「6月の半ば脇腹の怪我をしていて浦和実戦後、遠投や下半身をうまく使えるよう体重移動の見直しなどフォームのチェックをしてきて今日はそこが良かった。初球の入る方とかは意識した。変化球でカウントを取って打たせて取る投球ができた。浦学打線の圧は感じていた」と、大野が終盤まで強打の浦和学院打線を封じたことが勝因であろう。 本多監督最後の夏ということで主将の三田村もその想いは強い。 「メンバー外となる選手の引退試合で浦和学院戦に久しぶりに勝ってメンバー外の選手達からも背中を押してもらえた。最終回もベンチでは行けるぞっていう雰囲気が漂っていた。ぜひ監督と一緒に甲子園へ」と、あくまで主役は選手なんでと本多監督の意向で今春の段階から選手達も監督のためにという表現は封印。それでも皆口々に「監督と一緒に甲子園へ」と言っており、その想いは伝わってくる。チーム一丸となっている。次の相手は今春敗れた昌平が相手だ。 「今春はエラーで負けているので次こそは」(本多監督)春と違い夏は今大会無失策で来ている固い守備が綻びを見せなければ面白いゲームになるのではなかろうか。