〈13億円〉→〈7億円〉に買い叩かれるケースも…売り手企業が「大損しない」ために必ず知っておきたい〈買い手企業〉の選び方【M&Aのプロが助言】
「低い株価評価」が交渉の出発点となってしまう
売り手がよい条件を勝ち取りにくい状況を作り出している要因は、ほかにもあります。それは、M&A仲介会社の「株価算定書」です。具体的には、(1)そもそもM&A仲介会社の提供する株価算定が買い手の評価目線と異なる問題、(2)その株価算定書が売り手と買い手、双方に開示される実務上の問題、の2点です。 先述しましたが、仲介業界で広く採用されている「年倍(買)法」という株価評価手法は、営業利益(またはその他利益指標)の数年分に純資産を加算して、株式価値を計算する簡便法です。 年倍(買)法に基づく株式価値=営業利益(またはその他利益指標)の数年分+時価修正純資産 計算式が非常に簡単で理解がしやすい計算方法であり、M&A仲介業界で広く使われています。しかし、同法はファイナンス理論的になんら根拠がなく、買い手はそもそも年倍法に基づく株価評価をもとに意思決定はしません。利益指標に乗ずる年数は、業界ごとに相場が固定的に決まっており、成長企業ほど評価が低くなってしまう問題点なども孕んでいます。 M&A仲介サービスにおいて、この特に論拠もなく、買い手の評価手法でもない年倍法で試算した「株価算定書」が、売り手と買い手の双方に開示され、実質的に交渉の出発点として大きな意味を持つ場合があります。これが、仲介会社の株価算定書のもう一つの大きな問題です。 こうしたアプローチは、売り手にとって、正当な価値での事業売却を実現することを遠ざけるものであり、オーナー経営者としては避けるべきものです。参考情報としての株価は、買い手が実際に行う評価手法を用いて試算することが重要です。 さらにいえば、買い手の評価手法で試算した株価を目標とするのではなく、それを上回る好条件を勝ち取るために、買い手の競争環境をいかに十分に作って売却プロセスを進めるかが重要なのです。 作田 隆吉 オーナーズ株式会社 代表取締役社長
作田 隆吉
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