ロシアと北朝鮮が新軍事条約:「同盟」に温度差も
ロ朝に微妙な温度差も
ただ、新たな軍事同盟が安保理決議の明確な違反であり、国際社会の糾弾を避けられないことは、プーチン氏も承知している。首脳共同発表の場で、金正恩氏が「史上最も強力な条約」などと誇り、3回も「同盟」に言及したのに対し、プーチン氏はその後も含めて、一度も「同盟」とは言っていない(※1)。 また、有事の相互支援に関する4条には、旧軍事同盟(「友好協力相互援助条約」)になかった「国連憲章第51条と両国の法に準じて」という条件が挿入されている。国内法に照らして「今回は参戦しない」との選択もあり得ることを意味し、旧条約の「自動参戦条項」に該当しないという解釈もある(※2)。ロシア側が新条約の条文を公表していないことと合わせれば、「同盟復活」に対する国際社会の非難を回避するために、プーチン氏が新条約を巡るロ朝の微妙な温度差をあえて放置した可能性もある。
国際社会への背信行為
にもかかわらず、新条約が東アジアだけでなく、欧州も含む世界の平和秩序に対する重大な懸念を呼び起こしたことはいうまでもない。第一に、北への軍事支援や物資・技術の提供は、安保理決議で繰り返し禁じられている。北の制裁破りを監視してきた安保理の「専門家パネル」も、ロシアの拒否権行使によって4月に廃止された。自動参戦か否かを問わず、安保理常任理事国であるロシアがこのような条約を結ぶのは、国連加盟国と国際社会に対する前例のない背信行為の積み重ねとしか言いようがない。 第二に、最も懸念されるのは、武器・弾薬の見返りにロシアの先進的な核・ミサイル関連技術が北朝鮮に供与されれば、日韓などの周辺諸国や米国の防衛と安全を直接的に脅かすことである。 韓国の尹錫悦大統領は新条約を「歴史の進歩に逆行する時代錯誤的行動」と強く非難し、対抗措置としてこれまで自粛してきたウクライナへの殺傷力のある武器支援を「検討する」と表明した。これに対し、プーチン氏は「大きな誤りだ」と非難するなどあわてて反応した。新条約がウクライナ情勢と朝鮮半島を同時に揺さぶるものであることを如実に示した。