〈特別取材〉「海のはじまり」最終回を経て、脚本家・生方美久に改めて作品への想いを聞いてみた
■劇中に多く出てきた「選ぶ」「選択」「選択肢」。そのなかでも思いが詰まったシーンは?
想像される以上に人とコミュニケーションがとれないとできない仕事です。メインは「書く」なので基本的には孤独な作業ですが、映像作品なのでその先で関わる人間や組織がとにかく多い。オリジナル脚本といっても、ただ自分が書きたいことをそのまま書けるなんてことはありません。いろんな制約のなかで書き、いろんな意見を反映させて修正します。妥協点を探す作業の連続だなぁ、と感じています。それでもテレビドラマがすきなので、できるだけしがみつきたいです。 ただ、連ドラを3作終えたからこそ、映画や配信、もしくはテレビドラマであっても他局や深夜枠など、また別の形で作品つくりがしたいという気持ちも育ってきています。シナリオコンクールに送り続け、一次審査落ちが続き……という数年前を思い返すと、仕事で脚本が書けるというだけで奇跡です。この幸せな環境を当たり前だと思わず、一つひとつの作品と真摯に向き合っていきたいです。ざっくりと「どんなドラマがつくりたいですか?」と聞かれたときは「木皿泉さんのすいか」と即答しています。プロデューサーさんたちはみんな「なるほどー(笑)」っていう反応をされますね(笑)。あくまで自分の捉え方ですが、「すいか」ってコメディだしポップなのに、ずーっと死生観の話をしてるドラマだと思っていて。今回の「海のはじまり」はコメディでもポップでもないけど、死生観の話がしたかったドラマなので、いつかは「すいか」のように晴れやかな表現ができたら理想的です。宮藤官九郎さん脚本のドラマもだいすきなのですが、どれもコメディでありながら死生観の話が芯を食った形で出てくるところに憧れます。とにかくコメディが書きたいんです。笑ってたいし、笑っててほしい。フジテレビで書いた連ドラ3作のようなしっとりした雰囲気は自分のこだわりではないので、次はパキッとしたコミカルで晴れやかな作品がつくりたいです。 リアルタイムで観られなかった人は、生方さんのこの作品への想いを知ったうえで今一度、FODの見逃し配信で観れば…、セリフの捉え方、見え方がガラッと変わって、新しい気づきを感じられるはずです。 生方美久(うぶかたみく) 1993年、群馬県出身。大学卒業後、医療機関で助産師、看護師として働きながら、2018年春ごろから独学で脚本を執筆。’23年10月期の連続ドラマ『いちばんすきな花』の全話脚本を担当。 TEXT=GINGER編集部
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