【下関ボート・SGチャレンジC】田原成貴氏「寺田祥選手は下関に来た途端に輝きを増す」
ボートレース下関のSG「第27回チャレンジカップ」は24日、準優勝戦を勝ち抜いた6選手による優勝戦が行われる。暮れの大一番・グランプリ出場を懸けた賞金バトルは、最終局面に突入。ボートレースファン歴46年の元天才ジョッキー・田原成貴氏(65)が大きな期待を寄せるのは、3号艇の寺田祥(46=山口)だ。〝異名を持たないツワモノ〟が地元水面での「地の利」を生かしグランプリ勝負懸けを決める――。 【写真】「地の利」を生かし、準優をきっちり逃げ切った寺田祥 【田原成貴氏が熱く語る】これぞチャレンジカップ! ご存じの通り、この大会は賞金争いの最終章。全ボートレーサーの憧れの舞台・グランプリ出場18枠をどうやってもぎ取るか? そこが一番の醍醐味であるが、驚いたことに今回は準優1号艇トリオがすべてグランプリ出場「優勝条件」という状況となった。まさしく究極の下克上、文字通りチャレンジカップではないか。 さて、私の本命は地元の雄・寺田祥選手だ。山口支部と言えば、現役時代から大好きな今村豊さん(引退)のイメージが強いが、現役では寺田選手と白井英治選手が代表格。特に寺田選手の下関での強さは特筆すべきものがある。今から4年前の2020年、下関で行われたSGボートレースメモリアル。8戦7勝という圧倒的な強さで準パーフェクトVを達成したイン逃げは今も目に焼き付いている。 競馬でもボートでも「地の利」というのは戦う者にとって大きなアドバンテージだ。言葉では言い表しづらいが、理屈ではない肌感覚。いわゆる〝水が合う〟ってやつだ。競馬でいうと武豊君の京都競馬場、ルメールさんの東京競馬場。彼らがターフにいるだけで、どんな馬に乗っていても勝ちそうな雰囲気が漂う。実際、ここぞという場面で何度も栄冠を手にしてきた。たとえ不調であっても、ユタカ君は京都で復調のキッカケをつくり、ルメールさんも府中でリズムを上げるのだ。 話を寺田選手に戻そう。あくまで私個人の感覚だが、寺田選手は下関に来た途端に輝きを増す。もともと技術の長けたハイレベルなレーサーだが、下関にいると達人ぶりに拍車がかかる。今大会で言えば2日目12R、1号艇の峰竜太選手が一本かぶりの状況だったが、寺田選手は2コースから技アリの差し切り勝ち。今節は峰選手のエンジンが極度に出ていないとはいえ、この安定感ある2コース差しを見た私は「今節も寺田さんだな」と確信した。 寺田選手は不思議なレーサーだ。改めて考えると、これといった異名もない。高速ターンの桐生順平、インの鬼・西島義則、スタート巧者の菊地孝平、ウイリーモンキーの茅原悠紀、スピードスターの馬場貴也。こんな異教を持つ個性派レーサーは数多く存在するが、寺田選手にはキャッチコピーがない。そこが逆に魅力なのだ。際立った特徴はないが、いつも一歩引いて戦況を見ているような不気味さ、気付いたら勝っているナチュラルな強さを感じてしまう。そう、寺田選手はキャッチコピーでは表現できない、玄人好みのレーサーなのだ。 さあ寺田さん、グランプリ出場はすぐそこだ。優勝戦1M、唯一無二のプロフェッショナルなまくり差しを見せ、4年ぶりの大舞台への切符を手にしてほしい。
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