甲子園だけではない!限られた環境、選手、指導者で戦う“すそ野校”同士が見せた好ゲーム【24年秋・東京都一次予選】
<秋季東京都一次予選第4ブロック:都立大田桜台5-1都立五商>7日◇1回戦◇府中工科高校グラウンド 【動画】U18日本代表の選手たちはプロ志望届?それとも進学?プロでの完成予想図も考察 高校野球の現場は、大きく二極分化が進んでいる。 甲子園を目指し全国の舞台で活躍していくというチームと地区大会1回戦をなかなか勝てないチーム。それぞれ部活動として大会に参加している。現実には、後者のチームの方がはるかに多い。 この試合の両校も、今大会の登録人数は10人。しかも、故障や体調不良などで実質試合に出られるのはぎりぎりに9人。そんなチーム同士の戦いとなった。ともに夏の大会は初戦コールドで大敗しているチームでもある。 都立五商の夏は西東京大会で三鷹中等教育校に1対16で敗れた。都立大田桜台は東東京大会で都立板橋に0対18と大敗している。それでも、新チームとして秋季大会に単独チームで参加している。 それだけに「どんな試合になっていくのだろうか」という懸念もあった。しかし、始まってみれば、大田桜台の西郷一朗投手(2年)、五商の青木唯人投手(2年)が、ともに大きく崩れて自滅していくこともなく、ある程度はしっかりとまとめていかれる投球を披露したということもあって、きちんとした試合となった。 スコアとしては5対1で都立大田桜台が勝利したのだけれども、細かい守備などで少し五商を上回っていたとも言えようか。 2回まで0対0で進んだ試合は3回、1番からの好打順となった都立大田桜台は先頭の江津愛斗選手(2年)が中越二塁打。内角の球を上手に腕をたたんで運んでいった好打だった。江津選手は、この日は5打数で2安打だったが、アウトになった打球も、芯で捉えた好打であり、打撃センスの良さは垣間見せていた。 江津選手が三塁盗塁をすると、3番宮本琉平選手(2年)の右前打で先制。さらに四球後相手失策もあって2点を追加した。 5回にも都立大田桜台は宮本選手が中前打すると二盗三盗と決めて、暴投で生還して追加点を挙げた。そして、このリードを西郷一朗投手がしっかりと守り、7回の1失点のみで、8回からは遊撃手の宮本選手と入れ替わる。 7回にも4番濵中悠吾選手(2年)のタイムリーで1点を追加していた。お互いに、それほど打てるチームというワケではないので、訪れた好機をものにした大田桜台が少し上回っていたということである。 通常は限られたグラウンドで週5日、2時間半ほどの練習時間しか作れない大田桜台。しかも、部活動の顧問は建部彰吾監督一人だけだという。監督は校務も忙しい。そんな状況だから、二学期が始まった早々の今週は、わずか1日15分程度しか練習を観られなかったという。そんな中での公式戦ということになった。 「試合前にノックを打ったんですけれども、実はそれも久しぶりでした」と、苦笑していた。それでもそんな中で、大きなミスもなく試合としてもまとめられていたのは、夏休みの期間に積んできた練習の成果も出ていたと言ってもいいであろう。 都立五商は結果としては一歩及ばなかったものの、自滅していく形ではなかったのは、やはり吉松優監督が夏休みの練習をしっかりと積ませてきた証と言ってもいいであろう。 高校野球は、選手も指導者もそろわない“すそ野”に位置する学校が多い。こうしたチームが真面目に練習を積んでいるからこそ、上位校の存在もあるのだ。高校野球を伝える側としても、こうした“すそ野校”同士の試合を疎かにしてはいけないということも再認識させられた試合でもあった。