“王者のスタンダード”を取り戻した神戸。強い縦志向も、後ろからのつなぎも。切り替えがより明確になった
新戦力の井手口も好アピール
「90分プレッシングというのはかなりきついと思うので、そこは時間帯とか状況によって、コンパクトにするところとプレスに行くところ、そこはうまく使い分けてくれた」 そう振り返る吉田監督は、攻撃におけるポゼッションについて「繋ぐところもピッチ状況を考えながら。相手のプレスの度合いも見ながら、しっかりと良い判断ができたかなと思います」と手応えを語った。 開始5分の汰木康也による得点シーンはセットプレーの流れだったし、49分の追加点は神戸の得意な形である、中盤でボールを奪ってからのショートカウンターだった。 しかし、2センターに左サイドバックの初瀬亮が加わる形で、自陣からボールを動かしながら、サイドチェンジを織り交ぜて、左右のクロスからもチャンスを作るなど、ショートカウンターと大迫をターゲットにしたロングボールだけに頼るのではなく、メリハリのある攻撃の中に強みを出していく意識がはっきりしているのは印象的だ。 磐田もJ1王者の神戸を相手に、自分たちのスタイルをぶつける形で来たところもあり、神戸にとっては開幕戦の相手としてある種、やりやすかった部分もあるかもしれない。 それでも左サイドでスタメンに抜擢された汰木について、「競争心に火がついて活躍してくれたのは、彼にとってもそうだし、チームにとっても本当にプラスになる」と吉田監督が評価するように、ミドルシュートからの得点だけでなく、左のアウトサイドで持ち味を発揮すれば、新戦力の井手口陽介も豊富な運動量を攻守に活かして、神戸に新たなエネルギーをもたらせることを証明したのは大きい。 次節は柏レイソルとのホーム開幕戦、そしてFC東京とのアウェーゲーム、さらに浦和レッズを破ったサンフレッチェ広島戦と続いていくが、開幕戦でしっかりと自信を取り戻した神戸が、着実に上位争いに絡んでくることを予感させる勝利となった。 取材・文●河治良幸