「高タンパクで低カロリー、味はアンコウやフグ」日本が後れをとる食材「養殖ナマズ」の可能性とは
知り合いから愛知県大府市でナマズを養殖しているという話を聞いた。ナマズといっても日本のものではなく、ヒレナマズという中国やラオス、ベトナム原産のナマズである。ナマズ料理は、埼玉や千葉、茨城、栃木、岐阜など限られた地域で食されている郷土料理という印象が強い。10年以上前になるが、筆者は岐阜県飛騨市で「河ふぐ」という名で養殖されているアメリカナマズを取材し、薄造りを試食したことがあった。見た目もさることながら、弾力のある食感とともにふわっと広がる繊細な旨味はふぐそのものだったことを今も覚えている。 【写真】名古屋市内にあるビストロで提供される「ナマズのムニエル」2800円
■食材としてはメジャーな存在 一方、世界へ目を向けると、アメリカをはじめ、ベトナムや中国、インドネシア、アフリカなど多くの国で食べられている。食材としてはメジャーな存在なのだ。ナマズに可能性を感じた筆者は大府市へと向かった。 ナマズの養殖を手がけているのは、野菜や果物の収穫体験をはじめ、BBQやドッグラン、グランピングなどが楽しめる複合型施設「MINRAKU」のオーナー、林田秀治さんだ。林田さんは自動車工場など製造ラインのシステム構築を請け負う会社を経営する傍ら、2022年に「MINRAKU」をオープンさせた。
「2005年に会社を設立して順調に売り上げを伸ばしていたものの、この先何が起こるかわからないと思っていました。そこで事業を多角化しようと最初に取り組んだのが植物工場のシステムや設備の販売でした。その直後にリーマン・ショックが起こりましたが、植物工場のおかげで事なきを得ました」と、林田さん。 植物工場がきっかけとなり、食料問題を意識するようになった林田さんは、2008年に社員のために10反(約1万平方メートル)もの田んぼを借りて米づくりも始めた。さらに並行して子どもたちに動物と触れ合ってほしいという思いからアヒルや鶏、山羊などの飼育も始めた。ポニーや孔雀、羊など種類も増えていき、手狭になったことから「MINRAKU」の構想が生まれたというわけだ。