【サッカー日本代表 板倉滉の「やるよ、俺は!」】第18回 急なポジション変更、対応と心構えは?
■自分の中に宿るゴールへの嗅覚 もともと、CBあるいはボランチの原点は、川崎フロンターレ・ジュニアユース時代の恩師、髙﨑(康嗣)さんとの出会いにさかのぼる。1期生のセレクションの時点では、FWとして参加、そして〝得点王〟になった。 当然、前線の選手として活躍するイメージを思い描いていたが、髙﨑さんは僕の背丈に着目、守備的ポジションへの変更を指示してきた。当時の僕は大号泣だった。後ろなんてつまらない、絶対に嫌だと。 でも、最終的には髙﨑さんに説得されて、渋々守備を担うことになった。今となれば、髙﨑さんには感謝しかない。 フロンターレ、オランダのフローニンゲン、ドイツのシャルケでは要所要所でボランチを任されてきた。だが、割合でいえばやはりCBが多い。日本代表でもW杯を含めてCBが僕にとっての定位置となった。 だが、最近になって再びボランチへ。守備的MFとして先発起用されたヴォルフスブルク戦(第28節・4月8日)では試合前に一抹の不安もあった。何せ、26節のハイデンハイム戦では20分足らずしかプレーしていなかったからだ。 それでも起用されたからには応えなくてはならない。それがプロだ。結果的に後半立ち上がりで反撃へののろしとなる同点弾を決めることができた。 ボランチを3週間も続けていると、さすがになじんでくるもので、勘も戻ってくる。並行して、「この局面はもっとこう改善できる」といった意欲的な考えも浮かんでくる。それと、心のどこかにゴールへの意識があるせいか、CBではほとんどないシュートチャンスに巡り合えるのは魅力だ。 理想は昔ならばバルセロナで活躍したヤヤ・トゥーレ。今ならばマンチェスター・シティのロドリ。しっかり守備もできて、なおかつ得点感覚に優れている。素晴らしいお手本だ。とにかく、与えられた持ち場でしっかりと結果を出したい。この先、もしかすると、MF起用を前提とするクラブからの移籍オファーがあるかもしれない。 日本代表もしかり、例外ではない。過密日程の中でボランチ起用といったケースも出てくるだろう。東京五輪の準々決勝、ニュージーランドとの延長戦はまさにそうだった。 けれど、複数のポジションをこなせるユーティリティ性を売りにしたいかと問われれば、答えはNOだ。もちろん、選択肢の幅がある選手としてチームから重宝されるのはありがたいけど、自分から進んでアピールしたいとは思わない。 僕はあくまでもCBの選手という自覚がある。ただし、プロとしてはチームのニーズには対応するのは当然。自分の芯はブレさせることなく、時々フレキシブルに。それが可能性を広げ、良い結果を招くと思う。 構成・文/高橋史門 撮影/山上徳幸 写真/AFLO