BIG4よりも上? 錦織は全仏優勝候補3番手
日曜日に開幕した全仏オープンは、これを書いている時点で1回戦がほぼ終わっているが、大きな波乱なく上位シードが順当に2回戦に駒を進めている。 グランドスラム初優勝の期待膨らむ第5シードの錦織圭は初日に危なげなくこの1回戦を突破。地元フランスのベテラン、ポール アンリ・マチューに6-3 7-5 6-1のストレート勝利をおさめたことは、クレーでの5セットマッチを1日おきに勝っていかなくてはならないタフな今後を考えれば、上々の発進だ。 15日間のトーナメントはまだ始まったばかりだが、順当なら王者ノバク・ジョコビッチと全仏V9のナダルが準々決勝で当たるというので、そのビッグなカードの行く末に早くもメディアの関心は集中しているといっていい。その2人がいるドローの上半分には他にマレーもいて、下半分にはフェデラーしかいない……アンバランスなドローだという印象もそこでは語られている。 錦織は「楽なほう」と見られている下半分にいるのだが、ファンは「フェデラーにとっては楽な…」とは何事か!などとカッカしないでほしい。〈ビッグ4〉はやはり〈ビッグ4〉。その実績と存在感で開幕前の話題の中心になるのは当然で、世界のメディアはまずはそこを中心にストーリーを作る。一方で、錦織に対する評価が一過性のものでなかったことは、この数日、何人もの外国人記者に声をかけられて確信しているところだ。
1968年からこの大会に来ているというカナダの古参記者は、「僕が思うに、ケイは優勝候補の3番目だよ。上の2人はジョコビッチとナダルだけどね。去年のマドリードでのナダルとの決勝を現場で見ていたけど、ケイが完全に支配していた。あのときのナダルは最近のようにひどい状態のナダルじゃない。本当のクレーコート・キングだった」と熱弁をふるい、ローマ・マスターズを取材していたというイタリアのベテラン記者は、「下の山から上がってくるのは、ニシコリだね。ローマでは決して調子が良くなかったのに、それでもジョコビッチからセットを取った。第2セットのプレーを維持できれば間違いなく勝っていたよ」と目を見開いて力説した。 彼らの語る〈根拠〉は特に新しいものではないが、こういう予想を、聞いてもいないのに自ら話したがる記者が少なくないことを知り、錦織が、変化や刺激を求める人々の好奇心のやり場になっていることがうかがえる。 ただし、彼らの目が正しいかどうかが証明されるのはまだ先だ。 錦織が最初に格上と対戦する可能性があるのは準々決勝。トマーシュ・ベルディヒが順当に勝ち上がって来たならば、そこが山場であることは間違いないが、多少楽観的に見ることができるのは、これまで対ベルディヒ3勝1敗という対戦成績のおかげだろう。最後の対戦から2年半が経っているが、その間に飛躍的に成長したのは錦織のほうだからなおさらだ。ここを突破し、その先のフェデラーとの準決勝、これをなんとか実現させてほしい。もちろんフェデラーに対するお願いでもある。