渋谷はずっとある『ザキ山小屋』/テレビお久しぶり#127
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『ザキ山小屋』(ABCテレビ)をチョイス。 睡眠は人の意識を奪っている『あのちゃんの電電電波』/テレビお久しぶり#126 ■渋谷はずっとある『ザキ山小屋』/テレビお久しぶり#126 小屋のオーナーであるアンタッチャブル山崎と、従業員のドランクドラゴン塚地によるトークバラエティ、『ザキ山小屋』。今回は『渋谷をこよなく愛する御一行様』として、みりちゃむ、eggモデルのあいみんとあいさの3人が登場し、”渋谷の映え確定スポット ベスト5”を発表する。渋谷について、若者世代の持つイメージと、オジサン世代の持つイメージのギャップが印象的な回だ。同じく渋谷にはしょっちゅう訪れる私には、非常に興味深いテーマであった。これから私は、恥も外聞もなく、自分語りをさせてもらう。私と渋谷についての作文だ。ご了承いただきたい。 さて、私と渋谷との関係は、常に変化し続けてきた。元々は苦手な街という認識で(まあ今だって得意ではないのだけども)、しかし映画館や、かのSHIBUYA TSUTAYA(無くなるな!)があるものだから、たとえ街が嫌でも行かなきゃならない、という場所だったのだ。その頃は新宿でアルバイトをしていたので、ああ、渋谷に比べて新宿は落ち着くなあ、などと、安易に新宿と比較しては、新宿側に加勢していた。 それからしばらくしてアルバイトを辞め、新宿に通うことは無くなった。街に発生する用事は、ほとんどが渋谷でのものになった。嫌だなあ、怖いなあ、汚いなあ……などと思いながら毎週のように渋谷に通い、いつしか私は、用事が無くても渋谷へ行くようになってしまった。外出=渋谷という風に身体が認識してしまったのだ。今日は特に何の用事もないけど外には出たいな。そう思ったら最後、次の瞬間には渋谷にいた。 何の用事もないのだから、何もやることがない。カフェに入ってパソコンを開き、仕事をするだけだ。しかも、渋谷への苦手意識はずっとあるから、あえて井の頭線に乗り換え、往来の落ち着いている神泉駅で降りてから、渋谷に繰り出していた。カフェなら最寄り駅にもあるし、わざわざ神泉から回り込むような真似をしてまで渋谷に行くくらいなら家にいればいいじゃないか……このまっとうな正論を、渋谷は越えてくるというわけだ。 つまるところ、渋谷に行くというのは、私にとって、その一日に色をつけるという行為であるのだ。渋谷には何もかもたくさんあって、色々な文化を享受した気になれて、一日の終わりに「ああ、今日は何もしなかったなあ」と罪悪感を覚えても、「でも渋谷に行ったしな」と立ち直ることができるのだ。これは案外大事なことで、確かに私は、渋谷に行った日は調子が良いのだ。この「調子が良い」が具体的にどういう状態なのか自分でも分からないのだが、ともかく調子が良いのである。なるべく健やかに生きていくためには、自らを肯定する根拠がつねに必要。私の場合は「渋谷に行った」。渋谷に行っただけで偉いというのだから、ずいぶんちょろいものである。 今日も渋谷は、渋谷にある。明日も渋谷へ行こう。自らを肯定するために……。 ■文/城戸