「操縦士の命を危険に晒さない」…軍事用ドローン「時速150㎞自爆機も」自分で考え行動する驚愕性能
戦場に次々と投入され戦争の様相を一変させた軍事用ドローン(無人航空機)。ウクライナでは数千台のドローンが上空を飛び交い、戦況を有利に導くために使われている。世界ではどんな開発競争が進んでいるのか。最先端ドローンを展示する『2024国際航空宇宙展』(主催・日本航空宇宙工業会。10月中旬開催)を取材した。 【超進化】「操縦士の命を危険に晒さない」…軍事用ドローン「時速120㎞の自爆機も」最新鋭写真 米国ボーイング社が開発を進めるのは、人工知能を搭載したステルス型の無人機『MQ-28』だ。全長11mと大型で航続距離は3700㎞。最大の特徴はAI(人工知能)モジュールが組み込まれていて、情報収集、警戒監視、攻撃まで自律的にこなせること。有人機と連携した任務が期待されるという。 AIが搭載されると、具体的に何ができるのだろうか。 「例えば、あなたが車を運転している時にこの無人機が横を飛んでいるとします。前方から悪者がやってきた際に『僕の前に行ってくれ』と指示をすれば、無人機が自ら状況を判断して前に出て悪者と対峙してくれる。そんな機能です」(ボーイング担当者) ◆「1000㎞の飛行が可能です」 機体の先端部分には、レーダーやカメラなど任務によって違う装備品をつけることができる。例えば敵基地を撮影して戻ってくるミッションの場合、従来なら航路や速度など様々な手順をプログラムする手間があった。だが、AI搭載機なら一度指令を出せば、敵に見つからない最適なルートを自分で考えて飛行し、任務を終えれば戻ってくる。ボーイングでは次世代型の無人航空機として、AI搭載機の開発に力を注いでいるという。 ボーイングと並んで航空機業界のトップといえばエアバス(フランス)だろう。同社が開発中の『VSR700』は、ヘリコプター型の無人機で航続距離が長いのが特徴だ。 「このタイプのドローンの航続距離は通常200㎞程度ですが、ディーゼルエンジンを採用した『VSR700』なら1000㎞の飛行が可能です。重さ200㎏までの装備品を積めるため、例えば機体左側にミサイル、右側には潜水艦を探知するためのソナーを搭載することが出来ます」(同社担当者) 機体との通信は距離150㎞まではVHFやUHFなどの電波で直接行い、それ以上は衛星通信を使う。価格は1機20億~30億円だが、すでにフランス軍で導入が決まり日本にも売り込むという。 ◆「偵察も砲撃も小型化」 ウクライナがロシアとの戦いで実戦投入するのは、WBグループ(ポーランド)の偵察機『FLYEYE(フライアイ)』と自爆機『WARMATE(ウォーメイト)』だ。翼幅3.6m、長さ1.8mの『フライアイ』は最高時速120㎞で、最高飛行高度3000mで2.5時間以上連続飛行可能。翼幅1.6m、長さ1.1mの『ウォーメイト』は70分間の飛行が可能で、標的への突入速度は時速150㎞に達する。 どちらも分解した状態でバッグに収納して兵士が運搬することができ、組み立てから発射までの時間はわずか数分。『ウォーメイト』が運用される様子はWBグループのホームページから動画で見ることが可能だ。 WBグループの日本代理店をであるファーロスターの星尚男代表によると機体価格は「1台数千万円」。2014年からウクライナに導入した。星氏は、いまや戦場には大きな小型化の波が押し寄せていると話す。 「地上設置型の大型兵器は安価な無人機によって破壊され、大型ドローンの偵察機が小型ドローンの標的になるぐらいです。ドローンも小型化が進んでいる。偵察機は大型ドローンから小型ドローンへ移り、砲撃も小型ドローンによる精密攻撃へと置き換えられています」 日英伊が2035年度までの共同開発を目指す次期戦闘機と連携するのが、三菱重工業の戦闘支援無人機だ。まだコンセプトの段階だが、AI技術の利用やステルス設計などの特徴がある。有人機とネットワークでつながりながら連携して戦うイメージだという。 「有人の戦闘機で近づけないところまで行ったうえで敵の脅威を探知し、有人機からの指示に基づいてミサイル発射をする運用を考えています。有人機と一緒に複数機で戦うことを想定し、パイロットの指示でAIが判断して自律的な攻撃を行う。開発にはAI技術が特に重要と考えていて、防衛装備庁から受注したAI搭載技術の研究を進めています。社内には元航空自衛隊のパイロットもいるんです」(三菱重工業担当者) 今後も戦場での無人機のニーズは拡大していくのか。防衛省の幹部が語る。 「無人機は操縦士の命を危険に晒すことがないうえ、操縦者一人を育てるまでの多大な経費や時間も節約できます。そもそも人口が減っている日本では、いくら戦闘機があっても操縦者が不足してしまう。無人だからこそできる戦い方もあり、現場からも大きな期待が寄せられています」 戦場から生身の人間が姿を消し、無人兵器同士の戦いが繰り広げられる日がくるかもしれない。 取材・文・撮影:形山昌由 ジャーナリスト
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