「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」超絶技巧の演奏家7人が来日公演、クリスマスの名曲奏でる
クラシックの雑技団?
ウィーン・フィルとベルリン・フィルの精鋭ら7人が誰もが楽しめる極上の音楽を演奏する「フィルハーモニクス ウィーン=ベルリン」が、今年も12月に来日公演を行います。テーマは「世界のクリスマス」。ビオラを担当するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のティロ・フェヒナーさんに、聞きどころを語ってもらいました。 フェヒナーさん以外のメンバーは、バイオリンがノア・ベンディックスバルグリーさん(ベルリン・フィル第1コンサートマスター)、セバスチャン・ギュルトラーさん(元ウィーン・フォルクスオーパー交響楽団第1コンサートマスター)、チェロがシュテファン・コンツさん(ベルリン・フィル)、コントラバスがエーデン・ラーツさん(ウィーン・フィル)、クラリネットがダニエル・オッテンザマーさん(ウィーン・フィル)、ピアノがクリストフ・トラクスラーさん。 この顔ぶれで2018年に出した最初のアルバムが高い評価を得ました。今なお、多忙なスケジュールの合間をぬって、様々な国で遊び心たっぷりに編曲された交響曲やロック、ジャズ、民族音楽などを披露しています。 「クラシック音楽って、かしこまって聞くものと思われがちですが、僕らって写真からイメージすると雑技団みたいでしょう? 実際に、雑技団ばりの超絶技巧も披露しながら、お客さんの心をほぐす音楽を提供しています」
中谷美紀さんが提案「戦メリ」に思わぬ反応
今回は一風変わった「クリスマス音楽」が聞けそう。演目で目を引くのは、「バルチック クリスマス」。編曲も担当するギュルトラーさんが、ラトビア人の妻の影響でバルト3国の民族音楽の美しさに傾倒したことから誕生しました。「ラトビアの音楽は悲しげで重厚。美しさが香り立つようです」と、フェヒナーさんは新たな発見について語ります。 坂本龍一さん作曲の「戦場のメリークリスマス」も披露します。この曲は、ドイツ語圏ではさほどポピュラーではなく、フェヒナーさんも知らなかったそうですが、妻で女優の中谷美紀さんの薦めで取り上げました。「最初、ステージからお客さんの反応が感じられなかったので『寝てしまったのか』と思ったら、みんなさめざめと泣いていた。改めて素晴らしい音楽だと気づきました」 フェヒナーさんにクリスマスの思い出を聞くと、こんな答えが。「必ず教会に行きました。誰もが家に帰るので、車の往来が少なく鐘の音だけが聞こえた。本物のモミの木のツリーにつるされたロウソクに火をともしたり、プレゼントを開けたりするのが楽しみでした」。コンサートでは「各国のクリスマスのキッチンの香りを感じていただけるような演奏やトークをしたい」といいます。 フィルハーモニクスは、2024年も様々な挑戦をしました。大きなものは、10月の公演で演奏したブルックナーの「交響曲第7番」の第2楽章です。普段の彼らは、観客が飽きないよう3~4分程度の曲をスピーディーに演奏してきましたが、この楽章は長大でゆったりと奏でられます。「今までと違った視点で音楽を聞かせることができる、とてもチャレンジングな試みだった。ブルックナーになじみのなかった人にも、興味をもっていただくきっかけになれば」と期待します。 最近うれしかったのは、「スーパーマーケットで働く女性から受け取ったEメール」とのこと。差し出し人の女性は、クラシック音楽に全く興味がなかったものの、彼らの演奏会に行けなくなった友人からチケットをもらって代わりに行ったところ大感動。メールには「新たな扉をあなたたちが開いてくださいました」とつづられていました。「本当に励みになる。今後もどんどん輪を広げていきたいです」とフェヒナーさん。 日本ツアーでは、ブルックナーの演奏はありませんが、クリスマス曲と、この1年間演奏した曲の中からえりすぐりの曲を披露します。「笑っても踊ってもOKなコンサート。気軽に来てくださいね」とメッセージをくれました。 公演は、12月10日に静岡・富士市文化会館ロゼシアター、11日に愛知県芸術劇場、12日に大阪・ザ・シンフォニーホール、13日に福井・生涯学習センターなびあすホール、14日に東京オペラシティ、15日に東京・江戸川区総合文化センターで行われる予定です。(読売新聞編集委員 祐成秀樹)