土屋太鳳の素直な芝居が際立つ…”百合子”が嫌われ者にならなかったワケ。『海に眠るダイヤモンド』第2話考察レビュー
神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』が放送スタートした。本作は、1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と、現代の東京を舞台にした70年にわたる愛と友情、そして家族の壮大な物語だ。今回は、第2話のレビューをお届けする。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】土屋太鳳の芝居が素晴らしい…貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
若者たちの複雑な恋愛事情
現代の東京に生きる無気力なホスト・玲央(神木隆之介)の前に突如現れた“いづみ”(宮本信子)は何者なのか。その正体は、約70年前に長崎の端島で暮らしていた玲央に瓜二つの青年・鉄平を取り巻く3人の女性のうちの1人である可能性が匂わされている。 「あれは何角関係だろう?」という、いづみの言葉から回想が始まった『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第2話では、端島を襲った猛烈な台風が鉄平たちの複雑な恋愛模様と百合子(土屋太鳳)の“事情”をあぶり出した。 当時、約五千人もの人が集まって暮らしていた端島。新宿駅ほどの面積しかない小さな島に生活に必要な施設はもちろんのこと、ビリヤード場や映画館などもあり、厳しい労働環境で働く炭鉱夫たちの疲れを癒していた。そこには今の私たちと変わらない暮らしがある。 ただ1つ違うのは、当時は高度経済成長期で「これから日本はどんどん良くなる」という希望があったということ。特にそのエネルギー源を掘り起こしていた端島の人々はダイレクトに活気を浴びているから、仕事にも遊びにも精が出るが、対する私たちは不確実性の高い時代を生きている。 税金ばかりが上がって働けど働けど生活は楽にならず、それなのに日本全体が豊かになっていく兆しもない。頑張ったって意味ないじゃないかという現代に蔓延する諦めの空気感が、玲央というキャラクターに反映されているのではないだろうか。 そんな中で希望を見出すのは、それこそ真っ暗な坑道をひたすら進んで黒いダイヤモンドを掘り起こすようなもの。気温35度、湿度80%超えという同じような暑さの中では外を歩くだけでもへとへとな現代人だけれど、実のところ精神的なキツさは炭鉱夫たちと変わらないのだ。だけど、何のために頑張っているのか明白な分、彼らのことがどこか羨ましく思える。