好投したする熊本工・山本（撮影・永田浩）

　◆全国高校野球選手権2回戦　広陵2―1熊本工（12日・甲子園） 　100年以上の歴史を誇る伝統校の「1」を背負った2年生右腕が甲子園で堂々の投球を見せた。熊本工の先発山本凌雅（2年）が4季連続甲子園出場の広陵を相手に8回⅔を投げて2失点と好投。「1番はやっぱり重かった。プレッシャーもあったけど伝統校の1番という自覚を持ってプレーしなくてはいけないと思っていました」と話した。 ■西短などが苦しみながらも初戦突破【九州勢の初戦一覧】 　熊本大会までエースだった146キロ右腕廣永大道（3年）が右肋骨の疲労骨折で甲子園のベンチを外れた。熊本では背番号10だった山本がエースナンバーをつけることになった。「一番甲子園で投げたかったのは廣永さん」と先輩が使っていたグラブをつけてマウンドに立った。 　山本の真骨頂の制球力で1回から広陵打線を抑えてきた。スライダーやカットボールなどの変化球も低めに決まって打たせて取り6回までは散発3安打。5回には先制打を放ち投打でチームを引っ張った。「チャンスで回ってきたので自分で決めようと思った。適時打を打ってさらに気持ちが入ったので、このままゼロで抑えるつもりでした」。しかし7回に内野安打と四球でピンチをつくると適時打を許し逆転された。「疲れはなかった。自分の実力不足かなと思います」。9回に2連続四球で1死満塁として同じ2年生右腕の幸碧唯（2年）と交代したが、昨春から甲子園に立ってきたプロ注目右腕の高尾響（3年）と堂々と投げ合った。 　マウンドでピンチの場面では「廣永さんがいつもやっているので」と周りを見回して心を落ち着けた。ベンチ入りできなかった廣永はボールパーソンとしてフィールドにいた。山本が適時打を放ったときは「ナイスバッティング」と声をかけてくれた。勝利をプレゼントできなかったが、けがをして出場できなくてもずっと励ましてくれた先輩に「一番ありがとうと言う気持ちを伝えたい」と話す。 　最高の舞台で、プロ注目右腕と投げ合ったことは大きな財産となった。「背番号1をつけさせてもらったのはすごく誇りに思います。2年生で甲子園に立たせてもらったので、来年の春夏と絶対に戻ってきてまたプレーしたい。高尾選手以上の投手になってまた帰ってきたいです」。次は選手全員の信頼を集める絶対的なエースとなってまた、このマウンドに戻ってくる。 （前田泰子）