親の死亡届を出した後「口座の凍結前」に銀行預金を引き出してOK?《リスクとトラブル》元銀行員が解説
来たる2025年は「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者となる年。このシルバーウイークは、日頃はつい避けがちな介護や相続に関することが話題が出るご家庭もあるでしょう。 ◆【図表2枚】2025年には「団塊の世代」がすべて75歳以上の後期高齢者に(出所:厚生労働省) お金に関することは身内だからこそなかなか話に出しにくいもの。でも、親に万が一のことがあった「その時」にどう行動するのが正しいかは、ぜひ知っておきたいですね。銀行などの預貯金の扱いは、その最たる例でしょう。 みなさんの中に「死亡届を出した人の銀行口座から引き出したいのだけど、誰も知らないから問題ないだろう」このように思っている人はいませんか。 死亡した人の銀行口座は速やかに凍結する必要があります。凍結前に引き出すと、思いがけないトラブルに巻きこまれる恐れがあるので注意が必要です。 本記事では、死亡届を出した後に、銀行口座の凍結前にお金を引き出してもいいのかについて解説。引き出した後に待っているリスクや、払戻しが必要な場合に取る方法に関してもご紹介します。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
死亡届を役所に出しても銀行口座は「凍結されない」
役所に死亡届を提出しても銀行口座は凍結されません。銀行は、相続人から死亡した旨の連絡を受けて初めて口座を凍結します。 そのため、死亡届を役所に提出した後でも、凍結されていない限り、預金の引き出しは可能です。ただし例外的に、銀行側が口座を凍結する場合もあります。 新聞で名義人の死亡が確認できたり、葬儀が行われていた事実を、親族に確認したりすることで、名義人の口座を凍結するケースです。 死亡届を提出した場合、速やかにすべての取引金融機関に、死亡した旨を伝えることが重要です。
亡くなった人の銀行口座からお金を引き出すのは問題ないのか?
死亡した人の銀行口座を凍結前にお金を引き出した場合、大きな2つの問題が発生する恐れがあるので注意が必要です。 ・相続人どうしでトラブルが起こる要因になる ・相続放棄ができなくなる それぞれ解説します。 ●相続人どうしでトラブルが起こる要因になる 死亡後に銀行口座のお金を引き出した場合、相続人どうしでトラブルが起こる要因となり得るため、注意が必要です。 遺産を相続する場合、死亡時点での相続財産および負債を確定する必要があります。引き出されたお金も相続財産であり、遺産分割協議の対象財産です。相続税の申告をする際の財産に含まれています。 相続人の一人が勝手にお金を引き出すことで、他の相続人からの不信感を招くことにも繋がりかねません。特に、引き出したお金を何に使ったのか分からない場合、トラブルのもとになる可能性は高いでしょう。 死亡後、銀行預金を凍結する前であっても、お金に手をつけずにおくことが重要です。 ●相続放棄ができなくなくなる 凍結前の銀行口座のお金を引き出した場合、相続放棄ができなくなる恐れがあるので注意が必要です。 相続には、財産も負債も承継する「単純承認」、負債を清算して、財産が残れば承継する「限定承認」、財産も負債も承継しない「相続放棄」があります。 被相続人のお金を引き出したことは、財産を承継する意思があると解釈されるため、単純承認とみなされます。後に被相続人の負債が発覚した場合であっても、限定承認や相続放棄が認められない恐れがあるので注意しましょう。 どのような相続方法を選択するにせよ、相続預金の引き出しを行うことは控えるのが賢明といえます。