「生き別れになった息子を救いたい!」探偵が心を痛めた 、元妻の呪縛と戦う父の一念
筆者は、吉本興業でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務めています。厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」(2021年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯の30.2%、父子世帯の48.0%。子どもと別居している親の8割近くは子どもと会えていないのが現状だそうです。今回は、離婚後、息子と面会できなくなってしまった男性からの依頼で子どもの様子を調査した結果、思いもしなかった調査依頼へ変更になったケースを紹介します。(探偵芸人 オオカミ少年・片岡正徳、登場人物は全て仮名) 【この記事の画像を見る】 ● 離婚後、1人息子と 面会がかなわない男性からの調査依頼 離婚により親権を失ってしまった山崎伸二郎さん(37歳男性)は「協議離婚した元妻の恵梨香さん(39歳女性)と暮らす息子の優人くん(小学校2年生)が元気にしているのか、友達と楽しく遊べているのか、現状を知りたい」とのことで相談にみえました。 山崎さんが事業に失敗したことがきっかけで離婚した後に、何度か面会交流の機会があったそうですが、そのうち優人くんが体調不良などと、恵梨香さんがいろいろ理由をつけて会わせてくれなくなり、もう1年も会えていませんでした。連絡先の電話番号も解約され、家も引っ越したようで、恵梨香さんの両親も居所を教えてくれず、連絡の手段が途絶えたため、優人くんが元気で楽しく暮らしているなら幸せを願って忘れようと決心して調査依頼に踏み切ったそうです。
親権者(主に妻)が子どもを連れて居住地を変えて、父親を遠ざけるために消息不明になるケースはとても多いのです。そのケースでの“あるある”で、恵梨香さんの両親が何かしら手助けしているはずだと思い、張り込みを開始しました。 張り込み3日目の土曜日朝8時過ぎに恵梨香さんと優人くんが車で現れました。2人で実家に入った数分後に、恵梨香さんだけが出てきて車に乗り込み発車しました。今回の調査目的は優人くんの状況調査ですので、優人くんが出てくるのを待ちました。 それから恵梨香さんの母親が買い物に行って戻ってきたり、父親が庭の掃除をしていたりする様子は確認できましたが、優人くんは出てきませんでした。時間がたち午後7時過ぎに恵梨香さんの車が戻ってきて、優人くんを乗せて発車しました。 ● 元妻と息子が暮らすアパートを特定 部屋から出た男性が思わぬ行動 尾行の結果、恵梨香さんの自宅アパートを割り出すことができました。しかし、優人くんの状況が分かるような撮影ができていないため、張り込みを継続しました。 朝になっても自宅からは誰も出てきません。お昼を過ぎて午後1時近くに優人くんが出てきましたが、一緒に40代であろう男性も出てきました。 2人は近くの公園に行き、キャッチボールを始めました。これで楽しく暮らしている状況でも撮影できれば山崎さんも安心するだろうと思い様子を眺めていると、男性は優人くんに「下手くそ!」と怒鳴ったり、ボールがうまく投げられないと頭をたたいたりしていました。その様子を撮影しながら、とても大事にされているようにはみえませんでした。そして日常的にこういったことが行われているように感じました。 私はすぐに山崎さんに報告しました。山崎さんは怒りを抑え付けながら、虐待の証拠を押さえる調査に切り替えたいと依頼内容の変更を希望されました。その時点から調査内容が変わりました。 男性が優人くんに罵声を浴びせたり、グローブやボールを投げつけたり、優人くんの頭や背中をたたいたり、押し倒したりしている様子を撮影しました。 キャッチボールを終えて帰宅したアパートからは、男性と恵梨香さんが優人くんを叱る怒鳴り声や、優人くんの泣き声などが録音できました。 近所に住む人たちへも聞き込み調査をしました。その結果、複数の方々が証言をしてくれました。