JR東海リニア「名古屋―新大阪」着工時期の矛盾 国がゴリ押し「2037年全線開業」高いハードル
しかし、静岡工区が着工できないことから、JR東海は品川―名古屋間の2027年開業を断念した。新たな開業時期をJR東海は明示していないが、静岡工区は2017年11月に工事契約を締結しており、工事着手から開業まで10年というスケジュールを当てはめると、仮に今すぐ静岡工区の工事を始めれば、開業は10年後の2034年9月ということになる。 あくまで「今すぐ始めれば」である。実際には静岡工区の着工時期について見通しは立っていない。
■政府主張「2037年全線開業」が抱える問題 2027年開業断念を発表した後、JR東海は発注予定において山梨県駅の工期を2031年12月までと発表した。ほかに8月時点で公表されている発注予定を見ると第二大井トンネル、座光寺高架橋、道志川橋梁の工期はそれぞれ2030年3月、2031年3月、2030年3月となっている。これらをもって「2027年まで完成しない工区は静岡以外にもある」と主張する声も聞く。
が、リニアを担当する宇野護副会長は次のように話す。 「静岡以外でもスケジュールがタイトな工区があるのは事実。人手不足、資材高騰など工事をめぐる環境が厳しい中、お金をかければ2027年に間に合う可能性がある工区もあるが、いま無理をして2027年に間に合わせるのは合理的ではない」 経営判断としては自然だ。JR東海は今後の各工区の進め方について検討を進めており、これから発注する工事についても「工期は合理的に設定する」としている。
そこで気になるのは、政府が2037年の全線開業を主張していることだ。名古屋―新大阪間の工事についての詳細は決定していないが、まだ2027年で予定されていた品川―名古屋間の開業後、速やかに工事を始めて2037年に全線開業するという前提に立てば、名古屋―新大阪間の工期は10年ということになる。だとすると、2027年には着工する必要がある。 しかし、2027年はまだ品川―名古屋間の工事を行っている時期だ。となると、経営リスクを減らすために工事を2段階に分けるというJR東海の方針に反する。