NHK朝ドラ史上、最も視聴者をイライラさせたキャラ(3)史上最悪のトラブルメーカーを見事に演じた俳優は?
1961年にスタートしたNHK連続テレビ小説、通称“朝ドラ”。月曜日から金曜日まで毎朝8時から放送され、通勤や通学前の視聴者に活力を与えているが、時にはどうしても素直に好きとは言えないキャラクターも登場する。今回は比較的記憶に新しい朝ドラの中から、俳優の演技が上手すぎて視聴者を大いにモヤモヤさせたキャラクター5選をお届けする。第3回。(文・苫とり子)
賢秀(竜星涼)『ちむどんどん』(2022)
鉄板のダメ父親に続いて、近年朝ドラの“トラブルメーカー”枠となっているのがヒロインの兄弟/姉妹。特にここ数年で最も視聴者を悶々とさせたのが、2022年上半期に放送された『ちむどんどん』のヒロイン・暢子(黒島結菜)の兄である賢秀(竜星涼)だ。 4人きょうだいの長男として生まれた賢秀は、超がつくほどのお調子者。定職には就かず、一攫千金を狙ってはトラブルを起こして、その度に家族が割をくっていた。 長女・良子(川口春奈)が結婚する予定だった相手の父親から嘘話をでっちあげて金を巻き上げようとしたり、ねずみ講に手を出し、その解約金として暢子が飲食店の開業資金に貯めた200万を払う羽目になったり。やっていることは擁護のしようもなく最低だが、一方で同情する部分もあった。 というのも賢秀たちは幼い頃に父親を亡くしており、以降は母親や教師の仕事に就いた良子が必死に働いて家計を支えていた。その姿を見てきた賢秀が兄としてみんなの生活を楽にさせてあげたいと思っていたのも本当なのだ。もちろん、真面目に働いてくれるのが一番だが、それができない不器用な男であり、竜星の演技はコミカルだが、時折哀愁が滲んでいた。 大事な妹である信子に迷惑をかけてからは反省し、かつて途中で辞めた養豚場に再就職。そこの娘と結婚し、コツコツ働いて借金を完済した。現在、竜星は大河ドラマ『光る君へ』で藤原道長(柄本佑)の甥・藤原隆家を演じているが、そこでもキャラクターの清濁併せ呑む演技が光っている。 (文・苫とり子)
苫とり子