1年の留学プログラムのある高校に進学したことで大学留学への道が開けた
海外の大学への留学を考えるとき、そもそも自分が海外生活に向いているのか、学習環境に適応できるのか、不安に感じる人もいるだろう。それを見極めるのにまずは短期留学などで試してみる、というのも現実的な選択肢だ。 モナッシュ大学マレーシア校のキャンパス 今回取材した杉山美友さんも、1年間の高校留学を経たことで4年間の大学留学をスムーズに進められたという。米国や欧州ではなく、オーストラリアの名門校モナッシュ大学のマレーシアキャンパスを進学先に選んだ理由、また大手旅行会社に就職後にその経験がどのようにいきているかを聞いた。 杉山美友さん 経歴 2000年生まれ 2019年 郁文館グローバル高等学校 卒業 2023年 モナッシュ大学マレーシア校(Monash University Malaysia)卒業 2024年 株式会社JTB入社 ──留学を考えたのはいつごろからですか? 幼いころから公文をやっていて英語に触れていたことや、小学校の英語の先生の授業が好きで、その影響で、小学5~6年生で海外アーティストの音楽や海外の映画にも興味を持ちました。中学2年生ごろから、高校で1年間留学したいと具体的に考えるようになりました。 小中学校は国立の学校に通っていたので、そのまま附属の高校に進学して留学するという選択肢もありましたが、1年間の留学プログラムがある英語教育に特化した高校に進学しました。 ──留学を視野に入れて、附属高校ではなく別の高校に進学されたのでしょうか? 高校留学という明確な目標があったので、それに向けて準備ができ、1年間の留学プログラムが組み込まれている私立高校に進学しました。 中学は国立の附属校でバレーボール部に入り、部活動に打ち込む充実した毎日でした。しかし学業においては周りのレベルが高く、挫折感を味わうときもあり、このまま高校に進学して1年間留学した場合、帰国後に勉強面で不利になるのではないかと感じたんです。 全員が留学プログラムに参加する学校であれば、そういった不安なく留学に集中できると思いました。また、小中学校と、同じ環境のなかで過ごしてきたので、外の世界を見てみたい気持ちもありました。 ──進路を変えたい、という希望に関してご両親はどんな反応でしたか? 両親に話を切り出すときはとても緊張しましたが、「自分のやりたいことをしなさい」とすんなり受け入れてくれたので驚きました。小さいころからやりたいことを尊重してくれる方針で、また、私が海外留学に行きたいという気持ちに気付いていたのだと思います。 ただ、無条件に何でも認めてくれたわけではなく、やるからには高校で良い成績を取る、 奨学金をもらうなど、しっかり努力するという条件つきで背中を押してくれました。 ──もともと新しい環境に飛び込むことに対して、抵抗がないタイプでしたか? 中学から外の高校に出るときは、9年間慣れ親しんだ環境から新しい環境に飛び込むという初めての経験で、怖かったのを覚えています。でも、高校での新生活、そして一年間の留学を経験し、自信がつき、今では変化や挑戦を楽しめるようになりました。 ──高校1年間の留学を経験してどうでしたか? 留学は高校2年時に学年全員が行くのですが、生徒の成長を重視する学校の方針として、1人ずつ違う高校に通うことになっていて、また、家族とも極力連絡を取らないようにしていました。 私が通ったのは規模の大きいニュージーランドの高校でした。留学生が多く心強かったですし、最終的には友達にも恵まれて充実していてとても楽しかったです。ただ、キラキラした世界のなかにいたわけではなく、勉強についていけなかったり、友達ができなくて悩んだり、苦労もありました。ホームシックにも何度もなりました。 高校時代にホストファミリーのもとで家族の一員としての海外生活を経験したことが、後に大学留学し、寮で一人で生活することになったときの支えになりました。短期でも一度留学を体験してみることで、留学が自分に合うかどうかを見極めることができると思います。 ──高校留学の際に心がけたことはありますか? 高校の先輩から、「留学中は1人でうずくまっていないで、どんどん飛び込んだほうがいい」とアドバイスをもらい、「行動しなくては」ととても励みになりました。そのことを意識し、何かチャンスがある度に「やりたいです」と手を挙げたり、自分から情報を掴みにいったりしていました。 たとえば、部活動は、日本のように入部のタイミングが決まっているわけではなく、部活のメンバーに自分で声をかけて入る形でした。 2月から留学したため、現地の生徒はすでに部活動に馴染んで活動しているなかで、入りにくい時期だったのですが、インターナショナル・オフィスに行って、「バレーボールがやりたいです」「アーチェリーがやりたいです」と伝えて、積極的に情報をもらい、自ら動いて入部しました。また、友達にチャリティ・イベントの手伝いに誘われた際も、率先して関わっていました。 ──海外大学への進学はどのように決めましたか? 高校2年の終わりに留学から帰ってきて、進路を決める際には、日本の大学への進学も海外留学もどちらも選択肢として考えました。日本の大学の推薦入試やAO入試を視野に入れて、論文の準備や勉強もしながら、同時に、海外大学の説明会に行くなど、留学先のリサーチもして、自分の進路にどれが一番いいかを多方面から検討しました。 日本の大学生活も経験してみたかったのですが、最終的に若いうちに大きな挑戦をしたい思いと、海外で長く学んでみたい気持ちが勝りました。 同じように大学留学をする同級生も半数ほどいて、また、高校の先輩たちが留学先で頑張っていた点も励みになりましたね。 ──留学のための英語専門塾には通われたのでしょうか? 英語に関しては、高校の授業と独学で勉強しました。高校のネイティブの先生によるサポートが手厚く、 作文を添削してくれたり、一緒にスピーキングの練習をしてくれたり、ディスカッションの授業もありました。英語はとにかくたくさん勉強しましたし、その勉強は留学中にも生きたと思います。 ──留学先にオーストラリアのモナッシュ大学のマレーシアキャンパスを選んだ決め手は何でしょうか。 選んだ理由は大きく3つあって、1つ目は、急成長している東南アジアに身を置きたかったこと。2つ目は、留学の費用面を考えたときに、アメリカやオーストラリアに比べて比較的安価で、かつ、オーストラリアの本校と同じカリキュラムの質の高い勉強ができること。3つ目は、インターナショナルな環境だったことです。 現地のマレーシア人が大多数なのではと思われがちですが、海外からの留学生が多く、ヨーロッパやアメリカ、東南アジア、中東など、いろいろな国の人と一緒に学ぶことができます。実際に家族で大学の下見に行ったのですが、「ここだったら1人でも大丈夫」と感じたことが後押しになりました。(続く) 後編ではオーストラリアの名門校モナッシュ大学マレーシアキャンパスでの留学生活の実情、卒業後に就職した大手旅行会社で留学体験がどのように活きているのかについて紹介します。
Maiko Kataoka