うつ病患者は、ある脳の神経回路が「2倍の大きさ」 最新研究
新しい発見がもたらす手がかり
■新しい発見がもたらす手がかり これらの発見は、さまざまなうつ病の症状、特に反芻(ネガティブな考えを繰り返す)やアンヘドニア(快感消失)のメカニズムを理解する手がかりを提供する可能性がある。 アンヘドニア、すなわち通常楽しめる活動への興味や喜びの喪失は、物事に意味や魅力を見出す能力の障害に起因することが多い。セイリエンスネットワークが過活動状態にある場合、現在の出来事よりも内的な対話に注意が向かいやすくなる。つまり、以前楽しんでいた活動をしていても、その活動に集中するのではなく、絶えず思考や記憶を分析してしまうのだ。 セイリエンスネットワークが大きいことは、特定の内的状態(特に否定的または自己批判的なもの)に注意を「固定」することにつながり、アンヘドニアを強化し、報酬に対する脳の反応を妨げる可能性がある。 反芻のサイクルについても同様で、脳が同じ否定的なテーマに「ズームイン」し続ける状態を生む。過敏なセイリエンスネットワークは否定的な思考を特に強く感じさせ、不幸な自己強化のループを生み出し、抜け出すのが極めて困難になる。この過活動なネットワークは、否定的な思考に注意を引きつけ、時間とともにエネルギーや喜びを失わせるサイクルに閉じ込めることになる。 リンチとリストンの発見は、うつ病を新たな視点から捉える手段を提供し、日々その重荷を背負う人々に明確さや安心感をもたらす可能性がある。持続的な否定的思考やかつて楽しめた活動への喜びの欠如は、孤立感や混乱を引き起こし、周囲や自分自身から切り離された感覚を生む。しかし、これらの症状に神経学的な原因、すなわちこれらの精神的経験の背後に物理的な理由があると知ることで、それを理解し、管理するための新たな方法が見つかるかもしれない。 もしあなたがうつ病と闘っているなら、次に困難や不安な思考に「とらわれている」と感じたときには、それが注意を内側に向ける脳による反応であるかもしれないことを思い出してほしい。このメカニズムを理解することで、自分を慈しみ、少しでも周囲の世界に目を向ける勇気を持つことができるかもしれない。こうした小さな焦点のシフトが、時間をかけて他の経験のための、そして何より癒しのための空間を作り出す助けとなるだろう。
Mark Travers