トランプ大統領就任で中国人留学生に再入国制限の可能性。「不安で旧正月の帰国見送り」も
アメリカ留学中の中国人学生の多くが旧正月の一時帰国を延期している。 来年1月20日にドナルド・トランプ氏が米大統領に就任するが、その後ホワイトハウスが外国人に渡航制限を課した場合、特定の国からの留学生の再入国が困難になる恐れがあるからだ。 【全画像をみる】トランプ大統領就任で中国人留学生に再入国制限の可能性。「不安で旧正月の帰国見送り」も コロラド大学デンバー校のクロエ・イースト教授は英BBCに対し、「全ての留学生が今、不安を感じている」と指摘。中でも、中国に対し強硬姿勢を示しているトランプ氏の政策に対し、中国人留学生は神経を尖らせているという。 香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、中国の人気ソーシャルメディアアプリ「小紅書」(リトル・レッド・ブック)では、中国人留学生の間でささやかれている「アメリカへの再入国が禁じられるのではないか」という不安であふれる中、大学側から出された再入国に関する通知を再投稿している。 同アプリの投稿によると、プリンストン大学、ミシガン大学、ウェイル・コーネル大学メディカルスクール、カリフォルニア大学バークレー校などがそのような通知を留学生に送ったという。 12月第1週時点で、小紅書では検索ワード「米国入国1.20」に関する投稿は46万件に上っている。「1.20」とはもちろん大統領就任式の日付のことだ。トランプ氏はこれまで、移民規制の強化を公約にし、アメリカ史上最大の「大量強制送還計画」を実行すると宣言している。 BBCは米国土安全保障省とワシントンのシンクタンク「ピュー研究所」の最新データとして、2022年時点で約1100万人の不法移民がアメリカに滞在しており、これは人口の約3.3%に相当すると伝えた。また、米NGO「高等教育移民ポータル」によると、40万人以上の不法滞在者がアメリカの高等教育機関に在籍しているという。 コーネル大学の中国人学生リアム・ドゥさん(28)はサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙に、トランプ氏が就任する前にキャンパスに戻るよう大学からメールを受け取ったとし、春節休暇(旧正月休暇=来年は1月28日~2月4日)に一時帰国を控えるべきか迷っていると話した。 博士課程のドゥさんは「今は本当に怖い。すでに帰国のチケットを購入している人は多いが、春節後に日程を変更したらどうなるか、様子を見ようかと思う」と語った。トランプ氏がすぐに渡航禁止令を発令するかは分からないが、ドゥさんは「最悪のシナリオを心配している」と話した。 プリンストン大学の広報担当者によると、同大は11月22日に留学生に通知を送付した。その中で、トランプ氏の大統領就任後、アメリカへの再入国についての質問に、「政権交代が特定の移民政策やビザ発行についてどう影響するかは不明だが、大学は移民専門弁護士とのバーチャルQ&Aセッションを準備している」と回答していた。 カリフォルニア大学バークレー校は12月10日、留学生向けガイダンスを添えた通知を送付し、「アメリカ入国要件に関する将来の不確実性について言及した」という。 米非営利団体「オープンドアーズ」の報告書によると、中国人留学生は2022~2023年度に28万9526人がアメリカの大学に在籍し、2023~2024年度には27万7398人と微減した。中国人留学生のピークは2019~2020年度で37万2532人に達したが、その後、減少に転じている。 ポスト紙は、再入国の心配のほかにも、米中関係悪化による中国人へのヘイトクライム、ビザの拒否や無差別暴力に懸念を示す中国人留学生もいると指摘する。 エール大学を卒業し、数学の博士号を持つ31歳の中国人女性は、8年間帰国していないとしたうえで、現在は中国よりも給料が高い職探しのため労働許可証を取得していると説明。「アメリカのグリーンカードを取得するまで、中国に戻るリスクを負うつもりはない」と語った。 現状で中国の厳しい就職市場を考慮すると、卒業生にあまり時間は無いと、カリフォルニア大学バークレー校で政治経済学を専攻し、現在はキャンパスで働くアルバート・マー氏は指摘。「中国経済の大幅な減速は、卒業後、アメリカに留まるべきなのか、そもそも留学すべきだったのかというところまで学生を追い込んでいる」と述べた。
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