2025年4月「建築基準法改正」は改悪か…「耐震・断熱・気密リノベができなくなる」の真相
そもそも断熱・気密フルリノベとは?
断熱・気密フルリノベとは、通常の水回りやクロスの張替え等のリフォームにとどまらず、断熱・気密性能と耐震性能の向上を伴う改修工事のことを言います。一般的には写真の様に、柱・梁等の構造材をむき出しの状態(スケルトン状態)にして、耐震補強・シロアリ対策、床(基礎)・壁・天井(屋根)に断熱材を十分に施し、同時に気密処理も行って気密性能も確保します。 築40年以上の築古の既存住宅でもフルリノベにより、一般的な新築住宅よりも耐震・断熱・気密性能を高性能にできるということを知らない方は、意外にまだ多いようです。
中古住宅購入+断熱フルリノベは住宅取得の貴重な選択肢
古い家を解体して、新築するのに比べると、解体費がかからないことや、新築よりも工事費が安いため、一般的な新築住宅よりも高性能にしても、新築に比べて数百万円程度安く収まります。 さらに国は、既存住宅の性能向上に力を入れており、新築に比べると国や自治体の補助金も手厚くなっています。そのため、既存住宅を解体して建て直すのに比べれば、概ね6~700万円程度安く高性能住宅での暮らしを実現することができます。 新築の住宅価格の上昇が続いている中で、性能にこだわった住まいを指向する方々の貴重な選択肢になっています。
断熱・気密フルリノベに水を差す法改正
そのような中で、耐震、断熱・気密リノベを行うことを実質的に非常に困難にする改正建築基準法が来年4月から施行されます。法改正により、消費者の負担が重くなるだけでなく、場合によっては、半年以上にわたり計画をストップせざるを得なくなる可能性が高そうなのです。 さらに、検査済証がない住宅の場合は、手続きに非常に手間、費用、時間がかかるようになります。
なぜ、断熱・気密リノベができなくなるのか?
建物を新築や大規模修繕や模様替えの工事を行う場合、確認申請が必要です。自治体や民間の指定確認検査機関に申請することになります。 ただし、2階建て以下の小規模な木造建築物を対象に、建築確認で構造審査を省略する「4号特例」という制度があり、従来、新築では構造審査が不要でした。リノベにおいては確認申請自体が不要でした。 それが今回の改正で、「4号特例」の対象建築物が大幅に縮小されます。新築は構造審査が必要になり、既存戸建住宅の大規模修繕や模様替えでも確認申請が必要になります。この改正で、既存住宅の場合は、現行法に適合していない箇所があれば、リノベを考えている箇所でなくても、その部分も現行法に適合させる改修工事が必要になります(既存遡及に関してはかなりの部分で緩和あり)。たとえばカーポートですが、本来、建蔽率に算入されるべきものです。家の新築後に設置したことで、現状では建蔽率を超過している住宅は少なくありません。この場合は、断熱リノベをしたいだけでも、カーポートの撤去が必要になります。このように、やりたい工事だけでなく、想定外の工事を行うことが必要になる可能性があります。 そして、それ以上に問題なのは、とても大きな改正であるのにも関わらず、制度設計があまりにも準備不足の状況下での見切り発車となりそうだということです。そのため、少なく見積もっても6か月間程度は、戸建住宅で大規模修繕や模様替えの確認申請手続きは、ほぼできない状況に陥るのではないかと言われています。