輝きを取り戻しつつある錦織圭（ロイター＝USA　TODAY　Sports）

　日本テニス界が誇る男女の両エースは完全復活を果たせるのか――。今季テニスの4大大会第1戦、全豪オープン（メルボルン）が12日に開幕する。度重なるケガを経て4年ぶりに出場する男子の錦織圭（35＝ユニクロ）、2023年7月に出産して復帰後はツアー優勝から遠ざかっている女子の大坂なおみ（27＝フリー）は、ともに前哨戦で準Vと好調。再び大舞台で輝けるのか、テニス解説者の佐藤武文氏（53）が今後の展望を語った。 【写真】大坂なおみと新たな“相棒” 　錦織は股関節、右足首、左ヒザ、右肩など負傷が続き、長期間にわたって低迷していた。しかし昨年後半から調子を上げ、5日に行われた今年の開幕戦となる香港オープンのシングルスでは準優勝。2回戦では強豪のカレン・ハチャノフ（ロシア）を撃破するなど躍進した。この結果に佐藤氏は「今大会の錦織選手は1、2回戦でかなり名の通った選手に対して逆転勝ちをしていたり、ものすごく自信を深めた大会になったと思う」と振り返った。 　昨年の同時期は350位まで落ちていた世界ランキングも74位まで上昇。かつて同4位だった頃の輝きを取り戻しつつある。気になる錦織の今後について、佐藤氏は昨年のジャパンオープンを視察した経緯も踏まえてこう語る。「今までは長いラリーを続けていたけど、ジャパンオープンの時もかなり短いラリーの中でポイントが決まっていた。こうやってプレーした方がいいなと自分の中で模索して、ある程度の答えが出ている感じがする」と分析した。 　その上で、錦織が大舞台で再び上位を争える可能性について「全豪オープンは5セットマッチでツアーとは違うので、総合力というか体力が（勝敗を分ける）大きな要因になる。できるだけ1、2回戦は省エネで勝利を重ねていけるとすごくいいのでは」。通常のツアーで男子シングルスは3セットマッチだが、全豪オープンなど4大大会では5セットマッチ。そのため、ベテランの錦織にとっては体力の使い方がカギになりそうだ。 　一方、女子で元世界ランキング1位の大坂も、5日のASBクラシック（ニュージーランド・オークランド）シングルス決勝で、腹部の痛みにより途中棄権したものの準優勝と復活を印象付けた。米スポーツ専門放送局「ESPN」によると、大坂は「あまり深刻だとは思っていない。全豪オープンについては楽観的に考えている」とプレーに問題はなさそうだ。 　女王復権なるかは新コーチにかかっている。昨年9月に大坂は、4年間コーチを務めたウィム・フィセッテ氏との関係を解消。4大大会23勝のセリーナ・ウィリアムズ（米国）などを指導したパトリック・ムラトグル氏をコーチに招いた。 　佐藤氏は「去年就任したムラトグルコーチはナンバーワンの選手を育ててきて、大坂選手との相性が本当に良いのを感じる。大坂選手も4大大会を優勝しているけど、たくさん（4大大会を）取り続けている選手を指導した経験はものすごく大きいと思う。女子は特にコーチとの相性がすごく重要視されるので」と指摘。そして「今までは集中できてない時はプレーに出るタイプだった。それがすんなりとプレーできているのは、チームの中でストレスを抱えていないのが見て取れる」とプラス効果を強調した。 　そうなると、全豪オープンを含め今後の期待も高まる。「その2人（大坂とムラトグル氏）がチームアップ（協力）したのは、4大大会を取るためだと思う。復帰してある程度までいければいいとは、絶対に思ってないはず」と再び頂点を狙えると太鼓判を押した。2人の活躍が楽しみだ。