「世界最強のパスポート」にビザを課す…日本と中国の関係の現在地
■冷え込んだ日中関係を映し出す 中国へのビザが必要になったのは、新型コロナウイルスの感染拡大が要因だ。習近平政権は厳格なゼロコロナ政策を取ってきた。入り口でシャットアウト。つまり、ウイルスを持ち込む可能性のある、海外との人の往来を封じ込めた。 しかし、その中国は感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ」政策を2023年1月に終了した。中国本土に入る際に義務づけていた隔離措置を撤廃したのだ。それから1年以上が経過しているが、日本人に対する入国ビザは免除されていない。 そこが、きょうの話のポイントになる。このビザ問題は、冷え込んだ日中関係をそのまま映し出しているからだ。ビザ免除の問題が、ただでさえ難しい日中関係の政治の道具になっている。中国はあれほど徹底的にやった「ゼロコロナ」政策を転換してから、外国人の中国入国を緩和しているにもかかわらず、だ。 たとえば、今年3月から、中国とシンガポール、それに中国とタイは、それぞれ普通のパスポートを持つ者に関しては、ビザの免除、つまりノービザとする措置を導入した。30日間まで滞在できる。お互いの国がそのような協定を結んだのだ。 それに先立つ昨年12月には、フランスやドイツなど、6か国の国民が中国を訪れる場合、ビザを免除する措置を始めている。こちらは15日以内なら滞在できる。中国外務省はこの措置について「引き続き、高い水準で対外開放を目指すため」と説明している。 中国は国内経済が低迷している。フランス、ドイツといった主要国からの投資を呼び込み、景気回復につなげたいからだろう。「開かれた中国」というイメージを広げ、より多くの観光客を招き入れたいはずだ。 だが、景気回復を目指すなら、経済の結びつきが強い日本から来る人のビザは、真っ先に免除したらよいのではないか。日本人ビジネスマンが頻繁に中国へ行けないし、ビザを取得するのに時間がかかるなら、中国訪問を面倒に感じてしまうのではないだろうか。