「テレビに出たから良いというのはわりと幻想」ダンスに楽器、SNS…タレント的業務が増え続ける「アイドル声優」が生き残るのに不可欠なものとは
アイドル並みの人気を博すのも珍しくなくなった「声優」。一方で労働条件悪化への懸念などもあり、令和3年4月1日から、声優も労災保険への特別加入ができるようになりました。声優事務所・スタイルキューブ代表取締役社長・たかみゆきひささんは、競争の激化で声優業だけでは食べていけない状況が生まれ、取り巻く環境はさらに変わりつつあると言います。そのたかみさんいわく「タレント的な業務が増えたといっても、大きな仕事の部分は昔から大きく変わっていない」そうで――。 これからの声優業界に必要なこととは!?『アイドル声優の何が悪いのか? アイドル声優マネジメント』 * * * * * * * ◆アイドル声優の業務 「アイドル声優」……タレント的な業務の増えた声優といっても、実のところは大きな仕事の部分は、昔から大きく変わっていません。 基本はオーディションをとにかくどんどん受けて、小さな役から経験を積み重ねて、そしてゆくゆくは大きな役を手に入れることになります。 近年で増えた業務の内容でいうと、楽器の練習とSNS運用とネット配信があるでしょうか。 スタイルキューブでは楽器を無理にやらせることはありませんが、業界的には事務所が主導したり、もしくは個人の意志で、戦略的にひとつくらい楽器をこなせるようにするケースは増えていると感じます。 楽器を使った作品も多くなりましたし、そうすることで、請けられる仕事の幅を広げられる。そういったところを意識することも、業務の一環になっている印象はあります。音楽に関係したことだと、ダンスが得意な方もかなり増えました。
◆自主性が肝心 ダンスレッスンなどについて、スタイルキューブでは、レッスンを受けるかどうかは「可能性がある人かどうか」によります。可能性があると見出した子には、ある程度こちらからやらせることもあります。 ですが、基本は本人次第です。強制的ではない。本人の自主性に任せます。それが、人を育てるうえではいちばん大事だと考えています。 この仕事をずっとやってきてわかったのは、「自主性を伸ばしてあげれば、こちらからとやかくいわなくても上達する」ということです。 声優の基本とされる滑舌(かつぜつ)ひとつとっても、先に基礎訓練を始めるよりも、まずは台本を読んでみた方がいい。 読んでみて、表現したいことが見つかったのに、「そのための技術が足りない!」ということを実感してから、「ではそのためにやるべきことは?」という形で、基礎を教えたほうがいいんです。 そのほうが実感をもって身につきますし、そうしないと、本人が持っていた個性が潰れてしまうケースもあります。
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