尹大統領が乗った米空母を不法撮影した中国人、優秀共産党員だった
釜山(プサン)海軍作戦司令部付近で米空母を不法撮影した容疑で捜査を受ける中国人留学生は、過去に「優秀共産党員」に選定されていたことが把握された。これを受け、捜査当局は中国情報機関が関与している可能性があるとみて利敵容疑を立証する努力をしている。 【写真】釜山作戦基地に入港する米原子力空母「ニミッツ」 1日、情報当局によると、警察・国軍防諜司令部・国家情報院で構成された合同捜査団は釜山海軍作戦司令部作戦基地に入港した米原子力空母「ルーズベルト」を不法撮影した容疑で立件された中国人留学生3人に対し、中国情報機関の指示を受けて組織的に行動した可能性が高いとみている。この留学生らは6月25日にドローンを飛ばして「ルーズベルト」を不法撮影した容疑を受けている。この事件が中国機関の指示を受けた計画犯罪という点が明らかになれば、立件当時に適用した軍事基地および軍事施設保護法違反容疑のほか、利敵容疑で追加の立件が可能というのが捜査当局の判断だ。 利敵容疑を集中的に調べることになったのは、立件された3人のうち1人が共産党員として活動したという事実が作用したという。ドローンを操縦した留学生が2021年5月に中国C大学で「優秀共産党員」に選ばれたという事実を確認したという説明だ。 また携帯電話フォレンジックの結果、中国公安関係者の連絡先と中国共産党情報が多数確認された。情報当局は摘発された留学生らが長期間にわたり韓国の軍事基地と主要装備、米空母などに関する情報を収集し、これを本国に報告してきたと推定している。 実際、捜査の過程で留学生らが撮影したとみられる数百枚の韓米軍事施設の写真が発見された。捜査当局は、留学生らが2022年9月に釜山海軍作戦司令部領内を観察できる山を事前に調べ、2023年2、3月に入港した米原子力潜水艦「スプリングフィールド」と空母「ニミッツ」も撮影したとみている。当局は情報収集に頭角を現して優秀共産党員に選ばれた人物が韓国に派遣された可能性も排除していない。 中国人留学生の犯行は6月の大統領警護作戦に投入された軍人の積極的な対応で確認された。当時、尹錫悦大統領の「ルーズベルト」乗船計画に合わせて警護作戦をしていた陸軍将兵が行事場所付近の上空にドローンが飛行していることを伝えた後、軍・警が合同作戦に入り、3人の身柄を確保した。 行事直前に犯行が確認され、尹大統領の動線などは撮影されなかった。しかし捜査当局は秘密に分類される大統領警護計画が漏洩するおそれがあるとみて、7月に軍事機密保護法違反容疑に対する調査も着手した。軍関係者は「単純な軽犯罪事案として終わる可能性もあった事件を粘り強く追跡し、本格的な捜査につながった」とし「中国など第3国の情報活動と関係がある人員を注視している」と話した。 軍はこの事件をきっかけに、韓国国内の外国人のスパイ行為に関する法的対応体系を改善するべきだという声が出ている。現行のスパイ罪は「敵国」に該当する北朝鮮のための行為に処罰対象を制限している。事実上、外国人にスパイ罪を適用するのは不可能であり、相対的に軽い処罰となるしかない。スパイ罪は7年以上の懲役から死刑まで下される半面、一般利敵罪は3年以上から無期までの懲役が可能だ。 国会法制司法委員会の法案審査小委員会は先月13日、「敵国」に限定していた刑法第98条スパイ罪の適用対象に「外国またはこれに準ずる団体」を追加した改正案を議決した。情報当局の関係者は「国益のためなら北だけでなく外国のスパイ行為に対しても警戒心を持つ必要がある」とし「スパイ罪改正案が支障なく国会本会議を通過することを望む」と述べた。