GAKU-MC、25周年記念の10作目のアルバムにKURO(HOME MADE家族)が迫る! スペシャル対談企画
前作から4年、GAKU-MCソロ25周年を記念して、10作目のオリジナルアルバム『Master of Ceremonies』が届いた。2019年末からパンデミックと化した新型コロナウイルス感染症は、私たちの生活や価値観を劇的に変えた。エンタメ界は大打撃を受け、多くのイベントが中止となり、老舗のライブハウスも閉店を余儀なくされた。そんな激動の最中に醸成されたアルバム。GAKU-MC(以下GAKUさん)は一体どのように自分と向き合い、乗り越え、完成に至ったのか。私事で恐縮だが、自分は高校生の頃GAKUさんのラップをカバーしたところから音楽人生が始まっている。昨年はヒップホップ生誕50周年。今の日本のヒップホップシーンをどう見ているかなど、質問は多岐にわたった。 【全ての写真】GAKU-MCとKURO(HOME MADE家族)の撮り下ろしカット ――まず同業者としてタイトル『Master of Ceremonies』にびっくりしました。 自分にとってMC=ラッパーはずっとあったんですけど。普通の人にMCの説明をすると「あ、そうなんすね」みたいな。だからちゃんと言っとこうと。Mummy-D(RHYMESTER)とも話したんだけど、ラッパーっていうのは、Master of Ceremoniesじゃないといけないんだよねって。セレモニーの主人というか、群衆をコントロールできる腕前を持った人にしか名乗れない、そういう地位なんだよって。だからラップのスキルもそうですけど、ステージに立つときは、すべての人が最終的には音楽を楽しんで繋がって笑顔になって欲しいなという思いもあるのでこのタイトルをつけました。 ――すごくいいタイトルだと思います。収録曲に同名曲がないですが、この曲がそれに当たるというのはありますか? 「フライヤー feat.RHYMESTER」でしょうね。これは最初からRHYMESTERに入ってもらおうと思ったわけじゃなくて。あるときSNSを見ていたら「うわ、これ俺がずっとやりたかったライブだ。やられた!」と思ったときがあって。普段だったら「おめでとう」と思うんだけど。このときはすごく悔しくなって。それがRHYMESTERの『MTV Unplugged』だったんですよ。ずっとDJでやっていた連中が先に辿り着いているのを見て、すごく女々しい気持ちになって。それで「自由奔放」って曲を作ってRHYMESTERのところへ持って行って、ここの空いたピースを埋めてくださいって。今の気持ちを伝えたんですね。そうしたら「そんなこと言われて、俺らなんて返せばいいの?」と、(笑)。まあ、そりゃそうだと思い、「実はこういうトラックもあるんすけどね」ってもう一曲聴かせたんですよ。それが「フライヤー」で。そこで自分が忘れていたヒップホップ同業者たちとのコラボとか、ラッパーはかくあるべきみたいな話をいっぱいしたので、特にMaster of Ceremoniesと体現できる曲は「フライヤー feat.RHYMESTER」かな。 ――YouTubeで三人の対談を拝見しました。Mummy-Dさんが、みんなラップが上手くなっていると仰っていて三人とも深く頷いていました。今、GAKUさんにとって、上手いラップとは何ですか? 昔だったら、どれだけかっけぇ韻をいくつ並べられるかみたいなところはあったけど。今だったらそうだな……やっぱり、予備知識がない人が聴いたときに、はっきりと理解ができて、言葉の遊びとか、知的さがあって、でも笑いもあって、最後に腑に落ちるメッセージが届けられるような、それを難しくなさそうにやるのがいいなっていつも思うけどね。言葉数は決して多くなくていいと今は思うし。理想は二十代の頃から変わっていると思いますけどね。 ――確かに、言葉数が減って間が怖くなくなったのかなって思います。それってすごく勇気がいることだし、きちんと選択した言葉じゃないといけないし。昔は早口得意でしたもんね。 うん。得意だった。やっぱりひとつ大きかったのは、2006年5月31日に、私、ギターを買いまして。そこからギターを弾きながらラップをするようになるんだけど。ギターを弾きながらリズムを取っていると、ラップの言葉だけじゃないリズムがあって。休符、みたいなものをすごく意識するようになって。休符も音楽なので。自分の中では埋まっているみたいなところがあるかもしれないですね。