妄想に終わった歌手デビュー 「スター誕生!」落選で後年に意趣返し「反省してほしいですね」 話の肖像画 夢グループ創業者・石田重廣<6>
《思わぬ意趣返しも》
でもこの不合格が後年、僕が夢コンサートを開くようになって生きたんです。「スター誕生!」の審査員だった中村泰士先生とお付き合いがあったのですが、数年前に電話をいただいた。「社長、お会いしたいんだが」と。で、中村先生が大阪から来た。「お願いがある。夢グループのコンサートに僕を入れてくれないか」「先生、どんな歌を歌うんですか?」「自分で作曲した『喝采』をはじめ、いろんな歌を歌いたい」。で、僕は「イヤです」って言ったの。
中村先生は「えっ、なんで」となりますよね。で、僕は「だって先生、僕は落とされたんですよ、『スター誕生!』で。反省してほしいですね」と。そしたら先生が「え、ちょっと待って。どの場面で落ちたの?」「郡山ですよ」「いや、それは悪いが、僕は関係ないよ。最後の最終に不合格なら僕に責任があるかもしれないが、地方の予選は知らないよ」と。
そこで僕は「わかりました。先生がそうおっしゃるならば、夢グループのコンサートに入っていただきたいと思います。ただしいきなり全国はダメです。まず関西限定で、3年間の下積みをお願いします」と。こんな冗談を言い合っていたのですが、中村先生は律義に関西から九州と回り、さあ次は東京というときに病気で倒れて出演できなくなってしまいました。
病気で倒れられる前、うちの社員から歌手になった小牧勇太の曲を頼んだんです。小牧は中村先生に飲みに連れていってもらうなど、かわいがっていただいてましたので。曲が届いたのは亡くなられる2週間前、義理堅い先生でした。東京で歌ってもらえず、とても残念でした。(聞き手 大野正利)
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