ジェイ・Zやファレルも惚れ込むR&Bの後継者、Maetaが語る音楽ルーツと初来日への想い
ケイトラナダやファレルとの関係、初来日への想い
―そうした繋がりの中でも、とりわけケイトラナダと密な関係を築いているように感じられます。彼は『Habits』で「Teen Scene」、『When I Hear Your Name』で「Questions」、そして最新EPの『Endless Night』も手掛けていて、それらのクールでフューチャリスティックなダンス・チューンでは、あなたの艶美なボーカルが最大限に発揮されているように思いました。ふたりで“メイトラナダ(Maetranada)“とも名乗っているようですが、彼のどんな部分がスペシャルだと思いますか? メイタ:ケイトラナダともコラボし始めて数年になるけど、彼のプロダクションと私のボーカルはすごく相性がいいと思う。私はメロディックな曲調にリバーブをかけたりするのが好きなんだけど、彼のダンス・ビートに私の声を乗せるといい感じにフロウする。だから、今取り掛かっているデビュー・アルバムがリリースされるまで、新作を待ちわびてるファンのために何か出さないとね、ってことになった。それで、今までにふたりで書きためていたダンス・ソングを夏向けのプロジェクトとして出してみようと。取り掛かったら、これはいいかも!っていう仕上がりになったのが「Endless Night」で……。 ―EPのタイトルになった曲ですね。 メイタ:そう。その曲に新たにプラスして全7曲のプロジェクトになったというわけ。このプロジェクトのテーマは“フリーダム“。さっき話した彼との関係で馬鹿みたいに6年間も泣きっぱなしで、頭ではもういい加減に忘れなきゃって思いながら、そうできない状態で……。でも、せっかく夏なんだし、美味しいお酒やダンスを楽しんで、自由なシングル・ライフを謳歌して自分の人生を取り戻さなきゃっていう前向きな気持ちを歌っている。少しの間、自分を解き放ってあげたいというか。今までの作品とは全然違うスタイルだけど、仕上がりにはすごく満足しているし、きっと気に入ってもらえるはず。MVもすごく面白いコンセプトで、髪型も前髪を作ってみたり、ゲイのカップルにも登場してもらって、摩訶不思議な世界を描いている。 ―先行シングルになった「DJ Got Me」では、後半でインディープの「Last Night A DJ Saved My Life」(82年)のフックが歌われますが、これは誰のアイディアですか? メイタ:これもA&Rのオマーの選曲。私は曲を知らなくて、彼がこのダンス・クラシックをかけた時、フックの部分が気に入った。実はその時点で出来上がっていたのは1分30秒ぐらいで、これじゃ尺が足りないしリリースできないよって話になった時に、オマーのアイデアで後半に「Last Night A DJ Saved My Life」を付け足そうってことになった。それでもまだ短いって声がSNSであったから、長いバージョンも作ってある。これはプロジェクトの一環として近日リリース予定。Twitter(X)で文句を言う人がいなければいいんだけど…。 ―やはりSNSでの反応は気になります? メイタ:エゴサーチはやってる。人からどう思われているかがめちゃくちゃ気になって、Twitterで自分の名前を検索して、みんなが私のこと何てつぶやいているかをチェックしてしまうの。嬉しいコメントもあれば、傷つくこともあったりするけど。ほとんどスマホ依存状態で……よくないとはわかっているし、そのうちもうこんなことやってられないって日が来るんだろうけど、今のところは人の意見が気になる探索期。ただ、家族のこととかプライベートなことは公開しないようにしている。 ―ファレル・ウィリアムズともプロジェクトを進めていると聞きました。 メイタ:1年ぐらい前にファレルと曲を作るためにマイアミまで会いに行った。出来上がった曲は私のスマホに入ってるけど、まだ数人にしか聴かせたことがない。めちゃめちゃグルーヴィーでクールな曲。アルバムに入れるのか、それ以外の形でリリースするか、今のところは未定で温めている状態。ファレルとはすごく波長が合って、自分の恋愛についても話したんだけど、それをベースにセクシーでグルーヴィーな曲を作ってくれた。この私があのファレルと話してるってことが信じられなくて、以前やったあるインタビューについて褒めてくれた時には感極まって泣いてしまって、トイレでしばらく気持ちを落ち着かせないといけなかった。いずれにしても曲は近いうちにお披露目できると思う。 ―コラボでは、ヴィック・メンサがファッション・デザイナーの故ヴァージル・アブロー(2021年に41歳で急逝)に捧げて作った「Strawberry Louis Vuitton」(2023年)にサンダーキャットと一緒に客演していましたが、あれも素晴らしかったです。 メイタ:当時、ロック・ネイションにいたヴィックとは何回か会ううちに仲良くなって。彼がこの曲にボーカルを必要としていて、私はアドリブとかフリースタイルでフレーズを作るのが得意だから、送ってもらった音源にバック・ボーカルを入れたら、数日後には曲として完成した。その数週間後には深夜トーク番組の「The Late Show with Stephen Colbert」に出演して歌っていた。本当に急ピッチでことが進んだんだけど、すべてが自然でオーガニックに実現したコラボだった。 ―最近のアーティストで共感できる人はいますか? メイタ:私は昔の曲をよく聴くから新しいアーティストを聴くのは結構珍しいんだけど、数カ月前、ちょっと精神的に辛かった時期があって、その時に聴いたのがシーロウズという女の子のプロジェクトの「House Song」(2023年)という曲。今まで聴いた中で一番心が落ち着く穏やかな曲調の歌で、私が作る曲とは全く違うスタイルだけど、ギターの音色がすごく心地いい。あと、ビヨンセのアルバム『Cowboy Carter』(2024年)にフィーチャーされたシャブージー。最近知ったんだけどノア・サイラスとの「My Fault」(2024年)が好きで聴いている。それと、サム・オースティンズの「Seasons」(2024年)っていう曲。TikTokを見ていてこの曲のプロモーションが目に止まった。オルタナ系のクラブとかアンダーグラウンドのダンス・パーティーとかでかかってそうなクールな曲で気に入っている。この3人が最近気になったアーティストかな。 ―昨年12月に『When I Hear Your Name』 をベースにしたライブ・アルバムもリリースされました。2曲で一緒に歌っているケイレブ・カリーも気になりますが、現在はどんな編成でライブをやっているのでしょうか? メイタ:去年、『When I Hear Your Name』を引っ提げてのツアーで初めてバック・ボーカルを入れてみたら、すごくよくて。ケイレブは、去年のツアーのバック・ボーカルのひとりだった。ロンドン公演で「Sexual Love」をやった時に、スタジオ版でフィーチャーしていたジェイムス・フォントルロイのパートを歌ってもらったら、すごくうまくいった。彼は素晴らしいボーカリストで、大切な友達でもある。今のクリス・ブラウンとのツアーでは振り付けも少しプラスしたから、ふたりのバック・ボーカル兼ダンサーが参加しているんだけど、この編成もめちゃくちゃ気に入ってる。 ―8月の来日公演がどんなショウになるのか楽しみです。 メイタ:日本公演にはいつものバック・ボーカル兼ダンサーを連れていく。ビルボードライブは1日2回公演でそれぞれ90分なんだけど、こんなに長いセットは今回が初めて。歌あり、ダンスあり、ケイトラナダの曲もありで、ソウルフルなボーカルを披露する楽しいセットになると思うけど、どうなるかはお楽しみ。海外にはヨーロッパしか行ったことがなくて、日本は今回が初めて。日本は帰りたくなくなるぐらい最高だって聞いていて、1年前から行くのを待っていた。日本のオーディエンスはアメリカと比べて静かで礼儀正しいという前情報ももらっている。A&Rのオマーも同行するけど、彼は自称“日本通“で、お気に入りの場所にいろいろ連れて行ってくれるみたい。とにかくめちゃめちゃ楽しみ! --- メイタ来日公演 2024年8月28日(水)29日(木) 東京・ビルボードライブ東京 1stステージ OPEN 17:00 / START 18:00 2ndステージ OPEN 20:00 / START 21:00
Tsuyoshi Hayashi