甲子園の仙台育英戦で習得した「頭で理解する」野球 東北福祉大の最速153キロ右腕・猪俣駿太が明かす“転機”
「『自分はまだまだやれるんだ』と思いました。それまでは感覚でボールを投げているだけだったんですけど、あの試合中は自分の投球を頭で理解することができた。例えば強く振ってくる打者にはこの変化球を見せようとか、こういうフォームだとこういうボールが投げられるとか…頭で理解するコツをつかめたことは、今にも生きています」 大観衆が見守る接戦の中、幾度となくピンチでマウンドに上がり、「体の疲れ以上に心の疲れが出た」。その分、普段以上の集中力を発揮した。「接戦にならず大差がついていたら、(頭で理解するコツを)つかめなかったと思う。強いチームと戦って、試合に入り込んだからこそつかめて、自分自身がレベルアップできた」と猪俣。甲子園という大舞台が、成長を後押ししてくれた。
“おごり”捨て…「体の勉強」積み重ねた日々
高校卒業後の進路については元々「プロ一本」と考えていたが、両親の意向もあり進学を決意。同期の伊藤和也捕手、田中杏璃マネージャーとともに、明秀日立OBの先輩が多く在籍する東北福祉大に進学した。 入部当初は「『ある程度実績があるから』というおごりがあって、『自分はうまいんだ』と勘違いしていた」。ただ、先輩や同期の投手陣のレベルの高さを目のあたりにし、その上ケガで出遅れたことから、「このままでは試合に出られない」とすぐに考えを改めた。猪俣は「そういう面も含めて進学して正解だったのかなと思いますし、ケガのおかげで早いうちにおごりに気づくことができました」と口にする。
ケガをして以降は「体の勉強」に勤しんだ。トレーナーや先輩から積極的に話を聞き、ケガを防ぐ体づくり、体の使い方を学び、状態が悪い時の修正方法や各部位を鍛えるためのトレーニング方法も研究して自身の投球に生かした。 「体が突っ込んでいたらこう修正する、軸足の使い方を良くするためにこのトレーニングをする…というように、全部『イコール』で覚えていって、それらを積み重ねる期間にしていました」。甲子園で「頭で理解する」コツをつかんでいたからこそ、自身の体や投球と向き合うことができた。そして今春、努力が結果として現れた。