第160回芥川賞受賞会見(全文)町屋良平さん「いつもいろいろありがとう、と伝えた」
受賞は誰かに伝えたのか
共同通信:共同通信の瀬木といいます。おめでとうございます。 町屋:ありがとうございます。 共同通信:デビュー作でアマチュアボクシングを書かれて、今回プロのボクシングを書いて、その中でやっぱりご自身も作家としてプロになってきたという実感の変化もあると思うんですけれども、今回、芥川賞を取られたことで、さらにプロの書き手、プロの小説家という意識にどういう変化がもたらされそうかということと、あと今回のご受賞をどなたか、友人なりご家族なりにお伝えしたかどうか、教えていただけますでしょうか。 町屋:まず、プロとして小説を書くという意識についてなんですけども、自分もプロじゃない状態で小説を書いている生活から、賞をいただいて、プロとして書くようになった転換があったんですけども、そうしたプロになって今、書いているっていう実感っていうのが、ある日、突然あったんですけども、それはやっぱ遅れてくるものだったりしたんで、今回、賞をいただいたというありがたいきっかけはあるんですけども、こうした実感とか、書いていく上での覚悟みたいなものっていうのが、また遅れてくるんじゃないかっていうのは少し思っています。受賞を知らせた相手は、すぐに母親に電話をして知らせましたね。 共同通信:差し支えなければどんなお言葉があったとか、声を掛けられたとかってありますか。 町屋:すごい、おめでとうって言っていたんで、いつもいろいろありがとうっていうふうに言いました。 共同通信:ありがとうございます。 町屋:ありがとうございます。 司会:もうお一方ぐらい。はい、じゃあ前の女性の方。
埼玉での経験は作品に影響を与えたか
埼玉新聞:すいません、埼玉新聞の【コイデ 00:28:19】と申します。今日は本当におめでとうございました。 町屋:ありがとうございます。 埼玉新聞:町屋さん、東京都ご出身なんですけれども、幼少期から20代半ばまで埼玉の越谷にお住まいになったということで、埼玉で経験したことだったり、ご出身の越谷高校で体験したことが何か今回の作品に影響していることがありますでしょうか。 町屋:高校生活っていうのは結構、自分の場合はすごく地味なものだったんで、あまり正直、反映してないかなと思うんですけども、物心ついてから体が大きくなっていくまでずっと越谷市で育ったんで、結構、小説を書いていても、子供のころのことって、直接書いていなくてもかなり小説の中で影響しているなっていう、実感されることが本当に頻繁なので、子供のころに過ごした普通の風景みたいなものが、今まで書いた全部の小説の中にやっぱりあって、それはやっぱり、自分の体と言葉が日々、変わっていって、変化していって今に至るっていう意識が結構強いので、そういう意味では子供のころ過ごしたことっていうのが小説に結構、自分はすごく入っているなと思っていますね。 埼玉新聞:今回の場合、主人公がちょっと行き詰まって散歩するシーンなんかあるんですけど、あの辺がちょっと、越谷の風景かなと思ったんですけど、その辺りどうでしょうか。 町屋:それは違うんですけれども。 複数:(笑)。 埼玉新聞:すいません、すいません。 町屋:(笑)。自分が今住んでいるところもある種、自分が子供のころ過ごしていたところの近しさとか、ノスタルジーとかで選んでるところがあるので、違うんですけども、当たらずとも遠からずみたいな感覚は入ってると思います。 埼玉新聞:ありがとうございました。 町屋:ありがとうございます。 司会:では、最後におっしゃりたいこと、ございますかね。 町屋:特にないです。 司会:分かりました。どうもありがとうございました。 町屋:ありがとうございました。 (完)【書き起こし】第160回芥川賞受賞会見