高浜原発の敷地内に野生のサルの群れ、驚いた作業員転倒…組み立て式「おり」で監視・捕獲へ
関西電力高浜原子力発電所(福井県高浜町)の敷地内に多数の野生のサルがすみつく事態が判明し、高浜町と関電が対策に乗り出した。周辺の集落で農作物が食い荒らされるなどの被害が出ており、町は今秋におりを設置。関電は防犯カメラでサルの行動を監視しており、敷地内のサル減少に向けて力を入れている。(浜崎春香)
高浜町によると、関電から2年ほど前、「高浜原発敷地内でサルが出没している」と相談を受けた。発電に影響はないものの、フンで汚れたり、サルに驚いた作業員が転倒してけがをしたりするといった被害があったという。関電は町の助言を受け、花火で追い払おうとしたものの、サルが敷地を出ることはなかった。
町は業者に委託し、サルが拠点にする町内の区域や行動範囲を分析すると、昨年3月頃、高浜原発敷地内を根城とする新たなサルの群れがいることが判明。町内でも最大級の約90匹を擁していた。原発構内は追い払われることも少なく、サルにとって安全なすみかになっていたとみられる。
付近の木の実が餌になるほか、「食事」のため周辺の集落へ移動することもわかった。これらの集落では今年3月以降、畑の野菜や果物、米などの農作物がサルに食べられる被害が発生するようになった。
「子ザルが成長すると、さらに多くの集落の田畑を荒らす可能性がある。被害が拡大する前に食い止めたい」。町は関電に協力を呼びかけ、10月中旬、高浜町西三松の農地跡に置かれていたおりを敷地内に移した。おりは金網とトタン板を用いた組み立て式で、縦約3メートル、幅約7メートル、高さ約2・5メートル。内部にタマネギやニンジンといった餌を置いてサルを誘い、一度入ると外へ出られない仕掛けになっている。
関電はおりの維持管理を担い、餌の配置や清掃だけでなく、24時間稼働する複数のカメラを敷地内に取り付け、サルの行動を監視している。
町によると、現在はおりから「脱出」できるよう内外両側に竹の棒を置き、サルに餌があることを認識させている段階だという。今後、内側の棒を外して捕獲を始める。関電は「今後も立地地域の課題解決に貢献していきたい」としている。