<アニメータースキル検定>「このままでは手描きアニメが消えてしまう」 現場レベルの改革と健全化を目指す
アニメーターには“統一規格”がないこともあって、これまで検定ができなかったところもある。
「ただ、違う制作会社の人が集まると、大体同じことを言うんです。アプローチは違うけど、実は同じようなことをやっています。例えば、人の顔のデザインは千差万別ですが、基礎の基礎となる考え方があります。基本を学び、応用できるような教え方をしないといけません。制作本数が増え、海外に動画を出してしまうことで、動画の基本を学べず、原画のレベルが下がっているところもあるのですが、動画の基礎を学べば、原画のレベルアップにもつながります」
一方で「検定を権威にはしたくない」という。
「アニメーターの数を増やし、レベルアップすることが目的です。業界として育成していかなければいけない。多くのスタジオに賛同していただき、現場レベルでも『待っていた!』という声をいただいています。アニメーターは8、9割がフリーで、ギャラの交渉も難しいので、交渉材料にもしてほしいのですが、マウンティングのための検定ではありません」
日本の手描きアニメは1980、90年代に技術の一つの頂点を迎えたとも言われている。“スーパーアニメーター”の中には当時から活躍している人も多い。高齢化が進んでいることもあり、「文化を守らないといけない」という思いもある。
「このままでは手描きのアニメが消えてしまうかもしれません。世界的に見ると、日本のアニメは特殊な進化をしてきました。海外で日本のようなアニメを作ろうとしたり、生成AIもありますが、独自の進化をしてきた日本のアニメとはやっぱり違います。今のアニメでハイクオリティーと言われるものは、CGなどでキレイには見せていますが、全体的な手描きのレベルは落ちているようにも感じています。ベテランが引退する前に、この文化を守り、継承していかないといけません。10年後も日本のアニメを見たい!という思いがあり、今が最後のチャンスだと思っています。まずは底上げが必要です。教える側も少ないので、検定をしながら、塾や講習会を開いて、教えられる人も育てないといけません。課題はまだまだあります」
底上げによって、リテークが減り、労働時間の短縮、無駄な制作費の圧縮ができるはず。それがアニメーターの賃金、労働時間の問題の解消にもつながってくる。検定の浸透が、その一歩になるのかもしれない。