「カラーズ」(ポーラ美術館)開幕レポート。「色彩」をめぐる旅へ
近代から現代に至るまで、美術家たちが獲得してきた「色彩」とその表現に注目する展覧会「カラーズ ― 色の秘密にせまる 印象派から現代アートへ」が箱根の ポーラ美術館で始まった。会期は2025年5月18日まで。担当学芸員は内呂博之、東海林洋、山塙菜未。 本展は、色彩論や色を表現する素材との関係にふれながら、色彩の役割についてあらためて考察するもの。初公開となる新収蔵10点を含むポーラ美術館の名品を中心に、印象派から現代美術までが並ぶ。会場構成は「プロローグ」「第1 部 光と色の実験」「第2部 色彩の現在」。 プロローグ そもそも「色」とは、光線のうち物体に吸収されないで反射される波長が、人の網膜に一種の感覚としてとらえられるもの。また、太陽光をプリズムで分光してできる7色のスペクトルをもとに色相、明度、彩度によって表わされるものだ。 プロローグを飾る杉本博司の「Opticks」シリーズは、まさにこの原理を作品として見せるもの。同シリーズは、アイザック・ニュートンの著作である『 光学 』(1704)に由来しており、プリズムによる分光装置を透過した光のスペクトルをポラロイドカメラで撮影。そのプリントをスキャンしたのち、色調を微調整しながら拡大して印画紙に焼き付けるという一連のプロセスの繰り返しによって生み出されている。杉本自身が「光を絵具として使った新しい絵(ペインティング)」と評した写真作品であり、本展冒頭を飾るにふさわしいだろう。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)