「でもな、宗一郎。まわりは変わんねえよ」、中学卒業後にトヨタ自動車の工員を目指した三浦宗一郎の「選択」
■ 自分が変わると、周囲の人間も変わり始めた だが、三浦にはほかの人の言葉を受け止める謙虚さがあった。確かに腹は立つが、よくよく考えれば、自分の手で変えられるものは自分しかない。やめてと言ってやめてくれないのであれば、自分が変わるしかない。 それを悟った三浦は、徐々に自分を変えていった。自分の価値観を押しつけるのではなく、人の話をまず聞き、本を読み、そこで得た知識を実践した。 すると不思議なもので、自分が変わると周囲の人間も変わり始めた。気がつくと、三浦のことを無視する人間はいなくなっていた、最終的に、三浦はサッカー部のキャプテンや卒業式の生徒代表に選ばれている。 「15歳のときにいじめられたのはつらい経験でしたが、あのときに『まわりのせいにしない』ということに気づくことができて、逆によかったと思っています。あのままであれば、ただの意識高い系で、誰にも共感できない人間になっていたかもしれないから」(続く) 篠原 匡(しのはら・ただし) 編集者、ジャーナリスト、蛙企画代表取締役 1975年生まれ。1999年慶応大学商学部卒業、日経BPに入社。日経ビジネス記者や日経ビジネスオンライン記者、日経ビジネスクロスメディア編集長、日経ビジネスニューヨーク支局長、日経ビジネス副編集長を経て、2020年4月に独立。 著書に、『神山 地域再生の教科書』(ダイヤモンド社、2023年)、『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』(朝日新聞出版、2022年)、『グローバル資本主義vsアメリカ人』(日経BP、2020年)、『腹八分の資本主義』(新潮新書、2009年)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社、2010年)、『神山プロジェクト』(日経BP、2014年)、『House of Desires ある遊郭の記憶』(蛙企画、2021年)、『TALKING TO THE DEAD イタコのいる風景』(蛙企画、2022年)など。映像作家の元吉烈と制作したドキュメンタリー「釜ヶ崎物語」、テレ東ビズの配信企画「ニッポン辺境ビジネス図鑑」でナビゲーターも務めている。
篠原 匡