日銀・黒田総裁会見1月21日(全文1)これまでの金融市場調節方針を維持
中長期的な予想物価上昇率も横ばい
次に物価面では消費者物価の前年比はプラスで推移していますが、景気の拡大や労働需給の引き締まりに比べると弱めの動きが続いています。中長期的な予想物価上昇率も横ばい圏内で推移しています。先行きについては消費者物価の前年比は当面、既往の原油価格の下落の影響などを受けつつもマクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや、中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられます。 今回の物価見通しを従来の見通しと比べますとおおむね不変です。ただしリスクバランスは、経済の見通しについては海外経済の動向を中心に下振れリスクのほうが大きいほか、物価の見通しについても経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから下振れリスクのほうが大きいとみています。 海外経済を巡る下振れリスクは米中間の通商交渉に進展が見られるなど、一頃よりも幾分低下したものの、中東情勢を巡る地政学的リスク等を含め以前として大きいとみられます。海外経済の動向を中心とした経済の下振れリスクが顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶ可能性があると考えられます。こうしたことから物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れについては一段と高まる状況ではないものの、引き続き注意が必要な情勢にあると考えています。
量的・質的金融緩和を継続
なお、展望レポートについては片岡委員が消費者物価の前年比について、先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対されました。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。政策金利については物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しております。 今後とも金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。特に海外経済の動向を中心に、経済・物価の下振れリスクが大きい下で、先行き物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和を講じます。